2016年10月からB型肝炎ワクチンが定期接種となりました。
B型肝炎は他の予防接種と比較して、あまり馴染みがないかもしれません。
B型肝炎ウイルスに感染し、慢性化すると慢性肝炎、肝硬変、肝臓ガンの原因になります。
特に乳幼児は慢性化しやすいため、予防接種で感染を防ぐ必要があります。
B型肝炎ウイルスについて
B型肝炎ウイルスは、ヘパドナウイルス(Hepadnaviridae)科のDNAウイルスで、主に
- HBsAg (HBs抗原)
- HBcAg (HBc抗原)
- HBeAg (HBe抗原)
の3種類の抗原が特徴的です。
B型肝炎ウイルスも様々な遺伝子型があります
B型肝炎ウイルスにも、様々なタイプ(遺伝子型)があります。
日本を含むアジアでは、Ba、Bj、C型の遺伝子型が流行しています。
- J Viral Hepat. 2010;17:229-35
B型肝炎の疫学
B型肝炎ウイルスが、世界中の人々にどのような影響を与えているか、説明していきましょう。
世界におけるB型肝炎ウイルス感染と死亡者数
世界中で慢性のB型肝炎になっている人は、3億5000万人いるといわれています。
また、B型肝炎による世界での死亡者数は、2002年の時点で62万人以上いると見積もられています。
B型肝炎ウイルスへの感染と肝臓ガンについて
B型肝炎ウイルスは発ガン性があります。
(世界的には)肝臓ガンの80%は、B型肝炎ウイルスへの感染が原因といわれています。
B型肝炎の潜伏期間と感染性について
『潜伏期間』とは、ウイルスに感染してから肝炎の症状が出るまでの期間をいいます。
B型肝炎ウイルスの場合、およそ6週間から6ヶ月といわれています。
『感染性』とは、ウイルスが感染することができる能力のことをいいます。
B型肝炎ウイルスの感染性は、室温ですと7日ほどあるといわれています。
主に血液、精液などから感染します。
B型肝炎ウイルス感染の診断
B型肝炎ウイルスに感染しているか、感染したことがあるか等は、血液検査で判断できます。
- HBs抗原(HbsAg)
- HBs抗体(Anti-HBs)
- HBc抗体(Anti-HBc)
- HBe抗原(HBeAg)
- HBe抗体(Anti-HBe)
HBs抗原について
HBs抗原は、B型肝炎の表面にあるタンパク質です。
血液検査でHBs抗原(HBsAg)が検出された場合、『B型肝炎ウイルスに感染している』と判断されます。
HBs抗体について
一方でHBs抗体が血液中にある場合、
- B型肝炎に以前感染して回復した
- ワクチン接種をして免疫がある
のどちらかと判断できます。
HBc抗体について
HBc抗体はB型肝炎の症状が出現するころに血液中に現れてきます。
この抗体が検出された場合、
- 以前、B型肝炎に感染した
- 今、B型肝炎に感染している
のいずれかになります。
HBe抗原について
HBe抗原はB型肝炎感染の急性期でも、慢性期でも血液中でみられます。
B型肝炎ウイルスが体内でウイルスを複製している証拠といえます。
HBe抗体について
B型肝炎ウイルス感染の急性期や、ウイルスの急速な増殖を認めた後にHBe抗体が現れます。
抗体と抗原結果の解釈について
1つ1つ説明をしてもわかりづらいところですので、簡単に一覧にしてみました。
- MMWR Recomm Rep. 2006;55:1-25
B型肝炎に罹患し、治った場合
上の表と照らし合わせながら見ると分かりやすいかもしれませんが、B型肝炎ウイルスに感染し、肝炎の症状が出て、その後に治癒した(慢性化しなかった)場合の抗体・抗原の推移は上の図のようになります。
- 最初にHBs抗原
- 次にHBc抗体
- 最後にHBs抗体
が出現するのを特徴とします。
B型肝炎ウイルス感染が慢性化した場合
B型肝炎ウイルスに感染したけれど、ウイルスを体が除去できずに慢性化してしまうことがあります。
このような時は、以下のような抗原・抗体検査結果になります。
まとめ
B型肝炎ウイルスの特徴、ウイルスの遺伝子型、感染した場合の抗原・抗体検査の推移について解説してきました。
次回は、臨床的な特徴や、慢性化、ワクチンについて説明していきます。
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