前回はC型肝炎ウイルスの特徴と疫学(流行など)について解説してきました。
今回はC型肝炎の診断と治療について、簡単に解説していこうと思います。
C型肝炎ウイルスの診断について
C型肝炎はその名の通り「C型肝炎ウイルスに感染して生じる肝炎」でした。
C型肝炎ウイルスに感染をすると、以下の図のように血液検査が変化します。
ポイントとして、
- C型肝炎ウイルスのRNA(HCV RNA)が増殖し
- その後にHCVに対する抗体(Anti-HCV)が増加する
という経過です。
C型肝炎ウイルスに感染後の検査の特徴
上の図からもわかるように、C型肝炎ウイルスに感染すると
- C型肝炎ウイルスに対する抗体(Anti-HCV)
- C型肝炎ウイルスのRNA量
- 肝逸脱酵素(肝機能の指標)
が上昇します。
上昇するタイミングはそれぞれ異なり、
- 1〜3週間後:RNA量が増加
- 8〜9週間後:抗体価が上昇(Anti-HCV)
となっています。
抗体検査が最初に行われることが多いですが、感染後6ヶ月以上経過していれば、97%以上の割合で陽性になるといわれています。
(しかし、母子感染の場合、母の抗体を子供がもらっているため、生後18ヶ月までは抗体のみでの感染の判断が難しいです)
感染後、無症状のケースが多いです
上の図をみると感染後2〜3ヶ月後に肝炎の症状が出てくることがあります。
ですが、これら肝炎の症状と別の感染症との見分けは難しいことが多いです。
また、C型肝炎ウイルスの感染後の70%程度は無症状か軽度の症状しか出てこないため、診察のみで見分けるのが難しいです。
小児の場合、母からの母子感染が多いと説明してきました。
母がC型肝炎の場合、出産後に期間をあけて検査を繰り返す理由もここにあります。
C型肝炎の慢性化について
C型肝炎は予防と治療が非常に重要ですが、その話をする前に、慢性化した場合にどうなるか、簡単に説明しておきましょう。
C型肝炎に感染し、その後放置すると
- 75%〜85%は慢性化する
- 60%〜70%は慢性肝疾患を発症する
- 5%〜20%は20〜30年かけて肝硬変となる
- 1%〜5%は慢性肝疾患(肝臓ガンや肝硬変)で死亡する
と報告されています。
このように、C型肝炎を放置すると、長期的にみると予後が悪いですし、生活の質(QOL)も著しく低下するため、治療が行われます。
C型肝炎の治療と予防について
治療は抗ウイルス薬を使います
C型肝炎はウイルスですので、ウイルスをやっつける薬(抗ウイルス薬)を使用します。
この抗ウイルス薬をいくつか組み合わせて、月単位で治療をします。
血液中のウイルスの量(RNA)が一定の期間でゼロになるのを確認します。
しっかりと治療をすることで、
- 他者への感染のリスクを減らせる
- 生活の質(QOL)が向上する
- 肝疾患による死亡のリスクを減らせる
といった利点があります。
感染予防について
『血液製剤で感染するのでは?』と思われた方がいるかもしれません。確かに、ひと昔前まではそうでした。
しかし、近年では、血液製剤のC型肝炎ウイルスを検査しているため、輸血などで生じるC型肝炎は激減しています。
B型肝炎のように、ワクチンで事前に予防できるのが望ましいのですが、残念ながらC型肝炎ウイルスに対するワクチンはありません。
母子感染を予防するためには、妊娠する前に母のC型肝炎を治療するのが一番なのですが、予期せぬ妊娠も多いため、これだけでは不十分です。
- 帝王切開で出産する
- 母乳をやめる
などで予防効果を検証した研究がいくつかありますが、有効性ははっきりしていません。
まとめ
C型肝炎の治療と予防について簡単に説明してきました。
次回はD型肝炎について、簡単に解説していければと思います。
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