- 『どこからを小児の肥満といいますか?』
- 『こどもの肥満の基準について教えてください』
- 『小児の肥満の基準は、国内(肥満度・ローレル指数・Kaup指数)と海外(CDC・WHOなど)で異なるのでしょうか?』
など、小児の肥満の定義や基準について疑問が思い浮かびます。
今回はこれらの質問にお答えします。
結論からいうと、日本は独自の方法でこどもの肥満を定義しており、ややガラパゴス化しています。
はじめに:これまでの小児肥満の記事
小児の肥満について、これまでに様々な記事を書いてきました。
こどもの肥満は将来の糖尿病や心疾患のリスクになりえるので、早い時期からの対応が望ましいのですが、なかなか一筋縄ではいきません。
小児肥満について「どこから肥満というか?」という基準は曖昧です。
というのも、肥満を定義する指数はたくさんあるのですが、どれを使うべきかは実ははっきりしていません。例えば、国内では
- 肥満度
- BMI
を使用しています。
場合によっては、Kaup(カウプ)指数やRohrer(ローレル)指数が使われていることがあります。
一方で、CDC(アメリカ)やWHOは、それぞれ異なる基準を用いて
- Weight-for-length
- BMI for age
という指標を提唱しています。
今回は、小児肥満の指標や定義について解説していこうと思います。
小児肥満とはなにか?
こどもの肥満と過体重について
一般的に体重が増えるにつれて、正常体重から過体重(overweight)になり、最終的に肥満(obesity)になります。
海外(アメリカやWHO)のガイドラインでは、この点を考慮した記載がされています。
ここで肥満の定義ですが、肥満とは、
- 身体に脂肪組織が過剰に蓄積した状態
といえます。これをもう少し医学的に解釈すると、医療者にとって肥満とは
- 治療介入を要する状態
といえます。一方で、過体重とは
- 医学的評価を要する状態
です。
残念ながら日本の小児肥満のガイドラインや肥満度については、海外の考え方と大きくことなる名称が使われています。
小児肥満の指標について
どこからこどもの肥満というかは、
- 肥満度
- BMI
などをもとに判断されています。
肥満度と小児肥満について
日本では肥満度を使っていますが、この指標は6〜17歳を対象にしています。
計算方法はシンプルで、
の数式で計算できます。
標準体重は学校保健統計による性別・年齢・身長別の標準体重を使用することになっています。
6〜17歳では、
- 肥満度 20%以上:肥満
- 20〜30%:軽度肥満
- 30〜50%:中等度肥満
- 50%以上:高度肥満
と分類されています。
BMIとこどもの肥満について
アメリカや欧州諸国、WHOなど、海外ではBMIのパーセンタイルを使っています。
手計算は容易ではないため、自動計算サイトを利用されるとよいと思います。
身長・体重・性別からBMIとZ-scoreを計算してくれ、最終的にBMIのパーセンタイルがわかります。BMIのパーセンタイルが
- 85パーセンタイル以上:過体重
- 95パーセンタイル以上:肥満
とされています。
特にWHOの提唱するBMIパーセンタイルは、人種差を考慮し、最も汎用性があるといわれています。(ですが、私はその根拠まで詳しくはしりません)
日本の小児肥満の基準(肥満度)に関する問題点
上の分類をみていただくとわかるのですが、日本の小児肥満の指標は欧米やWHOのものと大きく異なります。
そもそも日本の基準でいう「軽度肥満」が、WHOやCDCでいう「過体重」になるのかすら不明です。
英文雑誌では、ほとんどがBMIパーセンタイルを使用しています。日本の基準がかなりガラパゴス化しているのが現状です。
肥満学会は「肥満度」にこだわる理由を『BMIパーセンタイルを使っても、体格の異なる個体が多数存在するため問題がある。このため「肥満度」の使用を推奨する』とガイドラインで述べています。(真意がわかりづらい文章ですよね)
根拠として以下の文献があったので、読んでみようと思います:
まとめ
今回は小児肥満の定義や指標について、簡単に解説してきました。
また、日本の基準は国際的なものと比較してもかなり異質であることは、小児にかかわる医療者は知っておいた方がよいと考えています。
私個人としては、論文で小児肥満を計測する際は、WHOのz-scoreを使用しています(肥満度といっても海外の査読者に理解してもらえないケースが多いからです)。
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