お子さんが下痢をした時の対処法を網羅的に知りたい保護者の方々へ
- 『赤ちゃんや子供が下痢をしてしまったけれども、水分や食事をどのようにして良いか分からない。』
- 『水分は何を与えてよいのか分からない』
- 『年齢や月齢によって対処法が異なるのか知らない』
など、急な下痢の対処法をあらかじめ知りたい方は多いとおもいます。
また、これら以外にも
- 下痢でお尻の皮膚が荒れてしまったけれどもケアの仕方を知りたい
- 家庭内で感染を広げないための対処法も知りたい
知りたいと考えている方も多いでしょう。
本記事では下記の内容を解説します。
本記事の内容
- こどもが下痢をした時の水分・食事摂取方法
- お尻の皮膚のケアについて
- 家庭内の感染対策
これらの内容を、小児科医としての視点からできるだけ分かりやすく、最近のエビデンスも交えながら解説していこうと思います。
こどもが下痢をした時の水分・食事摂取方法
赤ちゃんやこどもが下痢をした際、水分や食事摂取をどうしたらよいか迷われると思います。主なポイントを解説すると、次の3点が大切です。
- 水分・塩分・糖分が大事
- 母乳やミルクはそのまま与えてOK
- 離乳食や食事も無理に薄めたり、減らさなくてOK
1-1. どのような水分を与えたら良いか?
下痢をした時は、水分・塩分・糖分の3つが重要です。
なぜなら、これら3つを確実に補給してあげることで、脱水・塩分不足(低ナトリウム血症)・低血糖を予防できるからです。
理想的には経口補水液で水分を摂取させるのが良いでしょう。
ですが、経口補水液はあくまでも「理想的な飲み物」であり、お子さんの好みに合わないことがあります。
嫌がって飲めないようでしたら、こだわりすぎず、柔軟に対応しましょう。
こどもが飲みやすい飲み物ならば、薄めたジュースやスープでも構わないと思います。
塩分や糖分を意識しつつ、こどもが飲めそうな飲料水を選択してあげてください。
経口補水液や水分について詳しく知りたいかたはこちら↓↓
https://www.dr-kid.net/explanation-ors
1-2. ミルクや母乳について
授乳中の子供であれば、母乳やミルクを与えても良いでしょう。
もちろん、経口補水液と併用されてもよいです。経口補水液を飲めないならば、母乳やミルクを与えてもよいと考えています。
母乳の与え方ですが、嘔吐したり、吐き気がないなら普段と同じように飲ませてよいでしょう。
もし嘔吐してしまったら、1回量を少量にして、授乳の回数を増やすとよいです。
母乳は下痢の治療や脱水の改善を妨げません。
人工乳(ミルク)の場合、「薄めるように」と昔ながらの小児科医は指導してきました。しかし、人工乳は改良しており、ミルクを薄める必要は全くありません。最近の研究結果から、ミルクは薄めなくても下痢の期間はかわらないことが分かっています。
1-3. 離乳食や固形物など食事の与え方
結論からいうと、明らかに消化の悪いもの(油っぽいものなど)だけ避ければ、食事の内容を深く考えすぎる必要はありません。
さらに詳しく知りたい方は下の記事を読むとよいでしょう:
離乳食や固形物を無理に薄めたり減らさないでよいでしょう。
例えば、炭水化物と脂質の少ないタンパク質(卵や白身魚など)を意識すると良いでしょう。
体調の悪い時ですから、嫌いなものを無理に食べさせる必要はありません。
こどもの食欲を伺いつつ、よほど消化に悪そうなものでなければ、こどもの好きなものを食べさせてもよいでしょう。
2. お尻の皮膚のケアについて
下痢の時はお尻が不衛生になるため荒れてしまうことがあります。
ですが、対処法はシンプルでして、清潔と皮膚の保護です。
2-1. 放置するとおむつ皮膚炎になります
下痢をしている時は、お尻の皮膚ケアにも気をつけましょう。
下痢には消化酵素が含まれているため、皮膚が刺激されて荒れてしまうことがあります。また、皮膚で細菌などが繁殖してしまい、皮膚炎を起こすこともあります。
このため、下痢を放置すると皮膚炎になるのです。これをおむつ皮膚炎といいます。
2-2. お尻の皮膚のケア方法
おむつ皮膚炎の対処方法ですが、非常にシンプルでして、皮膚の清潔と保護です。
まず、ぬるま湯やおしりふきを使って丁寧に洗うとよいでしょう。
こすりすぎると皮膚が荒れてしまうので、やさしく拭き取ってあげましょう。
下痢の時は排便回数が多くなってしまいます。ちょっと大変ですが、便がでるたびに洗い流すことが重要です。
洗い終わったら、ワセリンや亜鉛華軟膏で皮膚を保護してあげると良いでしょう。
おむつ皮膚炎対策をさらに詳しく知りたい方はこちら↓↓
2-3. ドラッグストアやAmazonでも買える便利な軟膏
病院やクリニックでおむつ皮膚炎に処方する薬は決まっていて、ワセリン・プロペトか亜鉛華軟膏です。
どちらもドラッグストアやAmazonでも購入できます。
けれども同じような軟膏が欲しい場合など、市販品を購入するのも選択肢の1つと思います。
3. 家庭内の感染対策
家庭内の感染対策では次の2点が大切です
- 手指衛生
- 下痢嘔吐物の処理
の2点になります。
家庭内での感染対策をしておかないと、兄弟姉妹や保護者にまで感染が広がるケースもあります。
3-1. 手洗いが基本
家庭内の感染対策は手洗いが基本になります。
胃腸炎のウイルスは、便や吐物などの排泄物に触れ、手を介して口から感染しますからです(糞口感染)。
手洗いを行うべきポイントですが、
- 調理前
- 食事前
- トイレ後
- 下痢・吐物の処理後
- おむつ交換後
です。
石鹸やハンドソープ自体に胃腸炎のウイルスを弱める力はありあませんが、水と一緒に洗い流すことで、ウイルスの数を減らすことができます。
3-2. 下痢や吐物の処理
吐物や排泄物の処理方法ですが、付着した場所は速やかに行いましょう。
下痢や吐物の処理には、次亜塩素酸ナトリウムを使用します。
アルコールは一部のウイルスには効力がないため、次亜塩素酸ナトリウムがよいでしょう。
次亜塩素酸ナトリウムは市販品でもありますので、あらかじめ購入してストックしておいても良いでしょう。
3-3. 家庭で消毒液を作りたい場合
次亜塩素酸ナトリウムは市販されている家庭用漂白剤でも代用できることがあります。
製品ごとに濃度が異なりますが、6%くらいの濃度が多いです。床や衣類の消毒では、200ppm程度の塩素濃度でよいです。
具体的には6%の次亜塩素酸の漂白剤であれば、10mlの液を3Lの水で薄めて使用するとよいでしょう。おおまかな目安ですが、
- 次亜塩素酸の濃度が12%なら1.6mlに1Lの水
- 次亜塩素酸の濃度が6%なら3.3mlに1Lの水
- 次亜塩素酸の濃度が1%なら20mlに1Lの水
を使用するとよいでしょう。
まとめ
今回は主に乳幼児が下痢をした時の対処法について解説してきました。
ポイントを簡潔にすると
- 水分・塩分・糖分を意識して摂取する
- ミルクや母乳は普段通り
- 食事は脂っぽいものをさければ制限なし
- お尻の皮膚は清潔と保護をする
- 家庭内感染の対策に手洗いと消毒を
でした。
下痢をはじめ、こどもの病気は急にやってきます。
あわてないためにも、あらかじめ知識や対処法を理解しておくとよいでしょう。