小児の急性細気管支炎に対して、様々な治療のRCTが組まれていますが、その1つにエピネフリン(アドレナリン)吸入があります。
前回は、様々な治療法をBaysean Networkを用いて比較した研究結果を説明しましたが、やや焦点がぼけてしまい、分かりづらかったかもしれません。
今回は、小児の急性細気管支炎とエピネフリンだけにフォーカスした論文を見つけたので、ご紹介させていただこうと思います。
研究の方法
今回の研究は、
- CENTRAL
- MEDLINE
- EMBASE
- Scopus
- PubMed
- LILACS
- Iran MedEx
などのデータベースから、2歳未満の小児の急性細気管支炎とエピネフリンの有効性について関連しているRCTを抽出しています。
- 入院率
- 入院期間
などをアウトカムとしています。今回は、外来患者の入院率にフォーカスして行きましょう。
研究結果と考察
最終的に19の研究、2256の参加者が解析対象となります。
それぞれのアウトカムを見てみましょう。
外来:入院率(1日以内)
1日以内の入院率を、エピネフリン吸入 vs. プラセボで比較したものはこちらです。
リスク比で見ると、pooled RR = 0.67と、入院率が33%ほど低下しているのが分かります。
リスク差に変換すると上のようになります。RRでは、Anilらの研究は0があるため除外されてしまいましたが、RDではそのまま計算することができます。
RD = -7%で、入院率が7%ほど下がったのが分かります。NNTに換算すると、15となります。
外来:入院率(7日以内)
7日以内の入院率をメタ解析した結果は以下の通りです。
エピネフリン吸入とプラセボで比較して、リスク比にして19%ほど低下しています。
リスク差に換算すると、-5%で、NNTは20になります。
外来:入院率 (1日以内)
こちらは、外来患者において、エピネフリン vs. β刺激薬を使用した場合の入院率を比較しています。
リスク比で見ると、エピネフリン吸入の方が入院のリスクは33%ほど低いのが分かります。
リスク比で見ると、一部の情報を使用できていないので、リスク差で見てみましょう。
リスク差に変換すると、β刺激薬吸入と比較して、エピネフリン吸入の方が入院率が6%ほど低下しているのが分かります。NNTは18になります。
外来:入院率 (7日以内)
外来患者において、エピネフリン vs. β刺激薬を使用した場合の7日以内の入院率を比較しています。
エピネフリンを使用しても、β刺激薬を使用しても、入院率はほとんど変わらない印象です。
リスク差に変換してみましょう。
こちらもリスク差は2%で、入院率に与える影響はほとんど変わらなそうです。
まとめ
以上をまとめると、以下の表になります
vs. プラセボ | リスク比 | リスク差 | NNT |
入院 1日 | 0.67 (0.50, 0.90) |
-6.9% (-14.3, 0.5) |
15 |
入院 7日 | 0.81 (0.63, 1.03) |
-5.0% (-10.5, 0.5) |
20 |
vs. β刺激薬 | |||
入院 1日 | 0.67 (0.41, 1.10) |
-5.7% (-13.7, 2.4) |
18 |
入院 7日 | 1.05 (0.71, 1.54) |
1.7% (-8.6, 12) |
-59 |
急性細気管支炎にエピネフリンを使用すると、
- プラセボより入院率は1日、7日目は共に低い
- β刺激薬より入院率は1日目は低い
となりました。
次回は、異なるアウトカムでもみてみましょう。