乳幼児は風邪をひいた拍子に喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)が生じることがあります。
この状態は急性細気管支炎と呼ばれることがありますが、治療方法に関しては、様々な議論がされてきました。
急性細気管支炎の原因ウイルスとして、RSウイルスがありますが、詳しくはこちらの記事に記載してあります:
治療方法に関しては色々と異論がありますが、システマティックレビューとメタ解析の結果が複数あります。今回は、エピネフリン吸入の有効性をみたものを確認していきましょう。
研究の方法
今回の研究は、
- MEDLINE
- EMBASE
- the Cochrane Central Register of Controlled Trial
などから網羅的に文献検索がされています。
2歳未満の小児の急性細気管支炎を対象に文献を抽出し、メタ解析を行っています。
- 臨床スコア
- 酸素飽和度
- 呼吸数
などをアウトカムにみています。
研究結果と考察
最終的に14の研究が選ばれ、7つは入院、6つは外来、1つは不明の間はが対象でした。
外来患者における有効性
プラセボ vs. エピネフリン
プラセボと比較して、外来患者においては、臨床スコア、酸素飽和度、呼吸数などを軽快させる作用がありそうです。
sMD or wMD | (95%CI) | |
臨床スコア 30分後 |
-0.81 (sMD) |
(-1.56, -0.07) |
酸素飽和度 60分後 |
2.79 (wMD) |
(1.50, 4.08) |
呼吸数 30分後 |
-4.54 (wMD) |
(-8.89, -0.19) |
入院率を比較したメタ解析はこちらになります。著者らはオッズ比で報告していましたが、リスク比やリスク差にした方が解釈しやすいでしょう。
リスク比でいうと、エピネフリンを使用した場合の入院率は0.59倍(0.15-2.33)となります。
リスク差に変換すると、16%の入院率の低下となります。NNT換算ですと7です。つまり、プラセボと比較してエピネフリン吸入を七人行うと入院する患者が1人減ることになります。
β刺激薬 vs. エピネフリン
β刺激薬とエピネフリンの結果を比較していきましょう。
sMD or wMD | (95%CI) | |
臨床スコア 60分後 |
-0.21 (sMD) |
(-0.74, 0.32) |
酸素飽和度 60分後 |
1.91 (wMD) |
(0.38, 3.44) |
呼吸数 60分後 |
-7.76 (wMD) |
(-11.35, -4.17) |
臨床スコア、酸素飽和度、呼吸数の全てを見ても、エピネフリンの方がやや成績が良さそうです。ですが、推定値はやや不正確な印象です。
入院率はリスク比にして0.6倍と低下しています。リスク差に直すと以下のようになります。
リスク差で見ると、入院率は16%ほど下がっているのがわかります。NNTにすると、7です。
入院期間
最後に入院期間を比較してみましょう。
エピネフリン vs. プラセボ
入院時間はわずかですが、エピネフリンの方が5.9時間ほど短い傾向にあります。
エピネフリン vs. β刺激薬
こちらもごくわずかですが、エピネフリンの方が入院期間は約4時間だけ短い傾向にあります。
考察と感想
気になる点としては、L-epinephrineやRacemic epinephrineなど異なる薬剤が使用されている点でしょうか。
日本ではL型のエピネフリンが、海外よりもかなり少量で使用されており、この結果を国内へ一般化するときは少し注意が必要と思います。
量が少ないので、吸入をさせても「思ったほど有効でない」という現象が起こり得ます。
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/hotnews/int/200805/506446.html
まとめ
エピネフリンは、プラセボやβ刺激薬と比較しても、急性細気管支炎の症状を軽快させ、入院率を下げる可能性が示唆されています。
やや古い論文ですので、他のメタ解析がないかも探してみたいところです。