前回は、コクランデータベースの結果を参照しながら、エピネフリン vs. プラセボ or β遮断薬の入院率について簡単に解説してきました。
今回は、外来患者においての臨床スコアについて解説していきましょう。
研究結果 (vs. プラセボ)
臨床スコアについて
(上の図は原著より拝借:自分のStata®︎での解析結果と異なるため)
こちらの図表から、プラセボと比較して、エピネフリンを吸入した場合は60分後の臨床スコアがz-scoreに換算して、0.40点だけ下がる傾向にあります(standardized mean difference)。
120分後は、-0.73だけ下がっています。
酸素飽和度
60分後の酸素飽和度を比較しています。こちらの結果では、エピネフリンよりプラセボの方が0.61%だけ高い傾向にありました。
120分後の酸素飽和度はほとんど変わりありません。
呼吸数
60分後の呼吸数もチェックしています。
(上の図は原著より拝借:自分のStata®︎での解析結果と異なるため)
呼吸数はエピネフリンを使用した方が、3.2回ほど少ない傾向にあります。
心拍数
60, 120分後の心拍数もチェックしています。
エピネフリンを使用した方が、60分後の心拍数は8回ほど上昇しています。エピネフリンを使用しているので、ある意味仕方ないですね。
一方で、120分後の心拍数は落ち着いてプラセボとの差はわずかです。
まとめ
以上の結果をまとめると以下の通りです。
臨床スコア | sMD | 研究数 |
60分後 | -0.40 (-0.58, -0.23) |
6 |
120分後 | -0.73 (-1.13, -0.33) |
2 |
酸素飽和度 | ||
60分後 | 0.61 (-0.14, 1.36) |
5 |
120分後 | -0.05 (-1.22, 1.13) |
2 |
呼吸数 | ||
60分後 | -3.22 (-7.10, 0.65) |
3 |
心拍数 | ||
60分後 | 7.85 (5.62, 10.06) |
4 |
120分後 | 1.76 (-5.96, 9.74) |
2 |
研究結果 (vs. β刺激薬)
臨床スコア
β刺激薬とエピネフリンも比較しています。
臨床スコアは60分後はエピネフリンの方が若干改善しています。
臨書スコアは120分後も若干ですがエピネフリンの方が良いです。しかし、95%CIも広く不正確な推定です。
酸素飽和度
酸素飽和度も60分後、120分後で比較しています。
(図は原著より拝借:自分のStata®︎での解析結果と異なるため)
エピネフリン吸入も、β刺激薬吸入も、酸素飽和度の改善はほとんどかわりません。
120分後でも結果は同様です。
少し黄色で記した箇所の数字がおかしいと思ったので、記録として残しておきます。普通、前後差を取っているはずなのですが、ここだけ95になっており、明らかな外れ値です。
呼吸数
(図は原著より拝借:自分のStata®︎での解析結果と異なるため)
こちらが60分後の呼吸数の変化も見ています。エピネフリンの方が呼吸数の減少は良さそうな印象です。
(図は原著より拝借:自分のStata®︎での解析結果と異なるため)
こちらは120分後です。同じく、エピネフリンの方が呼吸数の減少は良さそうな印象です。
先ほどと同じく、Menonらの論文は、減少数ではなく、呼吸数を比較しており、明らかな外れ値です。
心拍数について
こちらは心拍数の結果を見ています。
エピネフリンとβ刺激薬の比較では、わずかな差しかありません。
まとめ
臨床スコア | sMD | 研究数 |
60分後 | -0.12 (-0.32, 0.08) |
8 |
120分後 | -0.10 (-0.31, 0.11) |
7 |
酸素飽和度 | wMD | |
60分後 | -0.37 (-1.18, 0.43) |
5 |
120分後 | -0.14 (-0.63, 0.34) |
4 |
呼吸数 | ||
60分後 | -3.75 (-7.42, -0.08) |
4 |
120分後 | -2.59 (-6.08, 0.89) |
4 |
心拍数 | ||
60分後 | 0.30 (-3.67, 4.27) |
5 |
120分後 | 1.35 (-4.76, 7.45) |
6 |
考察とまとめ
プラセボと比較して、エピネフリンを吸入した場合は、臨床スコアが改善し、呼吸数が改善する傾向にありますが、酸素化はそれほど変わらず、心拍数が増えています。
β刺激薬と比較した場合、エピネフリン吸入の方が呼吸数の減少効果はやや強い印象ですが、それ以外の臨床的なアウトカムはそれほど変わらない印象です。