前回は、小児の急性細気管支炎において、主にエピネフリンの吸入が入院率をどの程度下げるかについて説明してきました。
今回は、入院日数にどのような影響を与えるか考えてみましょう。外来患者と入院患者では、患者層が微妙に異なるため、入院率を低下させたとしても、入院日数はそれほど変わらない可能性があります。
参考にした文献は今回もこちらです。
研究の結果と考察
入院日数 ( vs. プラセボ)
例えば、入院日数をエピネフリン vs. プラセボで比較しています。
入院日数の減少効果は0.35日と非常にわずかです。
入院日数(vs. β刺激薬)
β刺激薬と比較した場合も、ほぼ結果は同じで、エピネフリン吸入の方がわずかに入院日数が短い傾向にあります。
臨床スコア (vs. プラセボ)
入院患者における臨床スコアは、プラセボとエピネフリン吸入を比較しても、ほとんど変わりません。
臨床スコア (vs. β刺激薬)
β刺激薬と比較した場合、60分後の臨床スコアはエピネフリン吸入の方が改善しそうな印象を受ける結果でした。
再入院率 (vs. プラセボ)
再入院のリスクは、エピネフリン使用グループの方が、リスク比にして71%低いです。
リスク差に換算すると、3%ほど低くなっているのが分かりなす。NNTに換算すると38でした。
再入院率 (vs. β刺激薬)
再入院率を比較すると、エピネフリンもβ刺激薬吸入もほとんど変わりません。
まとめ
以上の結果をまとめると以下の通りになります。
入院日数 | 平均差 |
vs. プラセボ | -0.35日 (-.868, .165) |
vs. β刺激薬 | -0.28日 (-.46, -.09) |
臨床スコア | 標準化平均差 |
vs. プラセボ | -0.04 (-.49, .41) |
vs. β刺激薬 | -0.82 (-1.49, -0.14) |
再入院 | RR | RD | NNT |
vs. プラセボ | 0.29 (0.05, 1.86) |
-2.7% (-7.8, 2.4) |
38 |
vs. β刺激薬 | N/A | 0% (-3.6, 3.6) |
N/A |
プラセボと比較した場合、エピネフリン吸入薬の方が、わずかに入院日数を短縮させ、再入院率を減らす効果がありそうです。
一方で、β刺激薬と比較した場合は、エピネフリン吸入薬は入院日数をわずかに短縮させ、臨床スコアの改善が望まれるかもしれませんが、再入院率はほとんど変わらない結果です。