科学的根拠

【小児】科学的根拠(エビデンス)からみた気管支拡張薬の咳止め効果

  •  『(気管支拡張薬の)テープを処方してください』

と外来でお願いされることがあります。
胸に貼るだけなので、保護者の方で非常に人気のある薬が気管支拡張薬のテープです。
ホクナリンテープ®︎、ツロブテロールテープ®︎、セキナリンテープ®︎あたりが該当するのでしょう。

「気管支拡張薬のテープは、咳止めのテープではありませんよ」と医療者から言われたことがあるかもしれません。
とはいっても、なかなか納得できない方もいると思いますので、これまで紹介してきた研究に触れつつ、システマティック・レビューとメタ解析の結果をみていきましょう。

本記事の目的

気管支拡張薬(テープや内服薬)は…

  • 咳止め効果がないことを理解しましょう
  • 副作用のリスクがあることを知ろう

システマティック・レビューとメタ解析は複数のエキスパートが過去の研究結果をくまなく探し、統合して解釈する、比較的信頼性の高い研究です。

今回はこちらの論文をピックアップしました。

研究結果

  • システマティック・レビューとメタ解析で対象となった研究
  • 咳止めの効果
  • 副作用

の3点に注目してみていきましょう。

対象となった研究について

対象となった個々の研究は以下の記事で解説しています。

小児の風邪に咳止めと気管支拡張薬を併用しても咳は改善しなかった。はじめに 今回はこちらの研究をピックアップしました。 咳止め(メジコン®︎やアスベリン®︎)と気管支拡張薬(ツロブテロール®︎、...

[記事入れる]

対象となった研究は2つのみです。

Dr.KID
Dr.KID
小児での臨床研究は少ないので、仕方がない面もあります…

1日後の咳

こちらが結果になるますが、コントロールよりも薬を内服しているグループの方が0.36ポイントだけ咳のスコアが高かったです。

2日後の咳

2日目は、コントロールよりも薬を内服しているグループの方が0.19ポイントだけ咳のスコアが高かったです。

3日後の咳

3日目は、コントロールよりも薬を内服しているグループの方が0.37ポイントだけ咳のスコアが高かったです。

まとめると

研究開始1〜3日を総合して考えると、統計学的な有意差は無いものの、気管支拡張薬を使用したグループの方が、やや咳のスコアが一貫して高かったと言えます。

0.2-0.3ポイントですので、臨床的な意義は薄いとは思いますが、少なくとも気管支拡張薬を使用しても咳は改善していませんし、むしろ遅れる可能性も考えられる結果でした。

副作用:振戦について

こちらは副作用の頻度を比較していますが、気管支拡張薬を使用したグループの方が、振戦が出現するリスクが6.8倍ほど高かったです。

まとめ

研究数が少なく確定的なことを言うのは難しいですが、小児の風邪による咳に、気管支拡張薬を使用しても、軽快させる効果はなさそうでした。

また、振戦をはじめとした副作用のリスクもあります。

やはり小児のかぜでの使用は、現状ではお勧めできるような研究結果はないと言えます。

まとめ

小児のかぜの咳に対する気管支拡張薬は

  •  咳を改善させない可能性が高い
  •  振戦をはじめとした副作用のリスクがある

 

ホクナリン・ツロブテロール・セキナリンテープは咳止めではない 「咳止めのテープをください」 と外来でお願いされることが多々あります。また、今回のかぜでは未受診なのにすでにホクナリンテープ...
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Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。