前回、インフルエンザ迅速検査の感度は発熱から検査をするまでの時間で大きく変化することを説明してきました。
上の図を用いて説明してきたように、感度80%以上の状態で迅速検査を行いたい場合、最低でも24時間は経過してからのほうが良いと言えます。
感度について
前回の記事でも触れてきましたが、インフルエンザ迅速検査の感度とは
「インフルエンザに罹っている人で、検査が陽性となる確率」
のことを言います。
陰性的中率について
一方、陰性的中率(NPV, negative predictive value)とは、インフルエンザ迅速検査で陰性と出た人で、本当にインフルエンザに罹患していない人のことを言います。
つまり、病院に行ってインフルエンザ検査をして医師に「インフルエンザの検査は陰性でしたよ」と言われたとします。
しかし、検査陰性のなかにも、実はインフルエンザに罹っている人がいます。
初日に検査したら陰性でも、2日目に検査をしたら陽性になった、ということはよく起こります。
つまり、検査が陰性とでても、100%インフルエンザに罹っていないとは言い切れないのです。
インフルエンザ迅速検査の陰性的中率について
インフルエンザ検査の感度・特異度は時間とともに変化することは前回説明しています。
感度は時間とともに48時間までは上昇しますが、それ以降は低下します。
一方で、特異度は常にほぼ一定で96%以上です。
陰性的中率は感度・特異度・罹患率から計算できます
感度・特異度は検査の性能ですので、インフルエンザの患者が多かろうが、少なかろうが変わりません。
しかし、陰性的中率(NPV)は罹患率に影響を受けます。
陰性的中率の数式は;
です。
特異度は96%以上で常に一定ですので、陰性的中率は時間によって変化する感度と、患者さんのいる集団(母集団;例えば小学校)での罹患率に影響されるといえます。
陰性的中率を時間と罹患率で分けてデータをみてみました
以下の解析では、特異度は98%で一定である、と仮定しています。
この条件下で、時間(感度)と罹患率が変化すると、陰性的中率がどのように変化するかみていきましょう。
母集団にいるインフルエンザの患者が少ないとき
例えば小学校の学年に100人いたとして、インフルエンザに罹患している人が10人以下(1〜10%)の場合を想定してみましょう。
この場合、陰性的中率は以下の図のようになります;
上から順に罹患率が1%、5%、10%となります。
陰性的中率はいずれの時間帯も90%以上の高い値を保てています。
このように、インフルエンザの患者数が少ないときは、「迅速検査陰性」はそれなりに信頼できるといえます。
母集団にインフルエンザの患者が15〜30%いるときの陰性的中率
次は、母集団にいるインフルエンザが15〜30%の時の陰性的中率をみてみましょう。
イメージとして、100人の学年で15〜30%くらいインフルエンザがいるケースです。
上から順に15%, 20%, 30%となっています。
先ほどと比較して、少し陰性的中率が下がったのがわかると思います。
例えば、陰性的中率を90%以上、欲しいと想定すると、
- インフルエンザの罹患率が15〜20%の集団では12時間以降
- インフルエンザの罹患率が30%の集団では24時間以降
の検査が望ましいといえます。
インフルエンザの罹患率は40〜60%の時
インフルエンザに100人中40〜60人罹患している場合を想定した陰性的中率です。
例えば、クラスの半分(50%)がインフルエンザに罹っている状況で、発症6時間後に検査をして、「陰性」と出たとしましょう。
この場合、本当に陰性、つまりインフルエンザに本当に罹っていない確率は、60%ほどになります。
大流行のこの状況で、検査の陰性的中率80%を達成しようと想定すると、最低でも24時間は待ったほうがよいと言えるでしょう。
インフルエンザの罹患率が70〜90%の場合
100人の学年で、70〜90人がインフルエンザに罹患している状況です。
(現実的に一度にこれだけの人が罹ることはないと思いますが、理論上の話として)
この場合、陰性的中率は以下のようになります。
かなり極端な状況ですが、100人中90人がインフルエンザの場合、24時間後にインフルエンザの検査が陰性でも、本当にインフルエンザに罹っていない確率は30%強となります。
まとめ
こちらがまとめの図です。
インフルエンザが流行している時こそ、24時間くらい経過してから検査をすることで、高い陰性的中率を保てるといえます。
この図からも、インフルエンザの検査は24時間以降経過してからがよいと言えそうです。
急いで検査をするメリットはほとんどありません。
◉ インフルエンザのシーズンは、しっかりと手指消毒をして、感染予防しましょう。手洗いは感染予防の基本中の基本です。
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