など、発熱にまつわる質問を時々うけます。
あまり知られていないことの1つに「生後3ヶ月未満の発熱は大きな病院へ(夜間でも、すぐに小児科へ受診を)」です。
今回は、生後3ヶ月未満の発熱について説明していこうと思います。
生後3ヶ月未満の発熱は要注意です
『生後3ヶ月未満の発熱は要注意』は小児科では常識です。
一般の方には少し極端と思われるかもしれませんが
- 『生後3ヶ月未満の小児の発熱は、敗血症の可能性があるので、入院を念頭に診察してください』
と研修医で小児科をローテートした先生には必ず指導します。
生後3ヶ月未満の小児は、予備力が少なく重症化しやすいのと、急変をおこしやすい時期なので、小児科医はとても慎重に対応しているのです。
重症な細菌感染症って何ですか?
『重症な細菌感染症』といわれても、なかなかはピンとこないかもしれません。
『重症な細菌感染症』の例をあげると:
- 髄膜炎
- 敗血症・菌血症
- 関節炎・骨髄炎
- 尿路感染症
- 肺炎
あたりが代表的です。
これらの疾患は、外来での治療ではなく、入院治療が必要です。
生後3ヶ月未満の発熱の原因は何が多いですか?
発熱の原因の70%は感染症です。
多くはウイルス感染症で軽症で終わることもありますが、重症な感染症は10%〜15%程度に潜んでいます。
特に、月齢が低くなるほど重症感染症の割合が高く;
- 生後2週未満:25%
- 生後4週未満:13%
- 生後4〜8週: 8%
と報告されています。
重症感染症のリスクが高い理由
生後3ヶ月まで、赤ちゃんの免疫機能は未発達で、免疫力はとても弱いです。
このため、生後直後から6ヶ月までは、母親からもらった免疫(抗体)に守られています。
お母さんからもらった免疫力をすり抜けて感染しているので、タチの悪い感染を起こしているかもしれません。
また、本人の免疫力は低く、体の予備力も少ないため、重症化のリスクが上がってしまいます。
小児科では重症感染症を見分けられすか?
ベテランの小児科医でも、生後3ヶ月未満の小児の重症化を見分けるのは難しいこともあります。
しかも、重症例を見逃した場合、合併症や後遺症を残す危険があるため、かなり慎重に対処します。具体的には;
- 問診 と身体診察
- 検査
の2つで見分けています。
1.こんな点を聞いて、診察しています
重要視しているのは『普段と異なる様子がないか』という点です。
普段から子供をみている母親が『何となくおかしいと思ってきました』というのは、結構当たっています。
(この言葉を信じて、何人かの子供の命を救えた経験もあります)
あと、家族内で調子の悪い人がいるか、周囲に流行の感染症がないか、妊娠・分娩・出産歴も参考にします。
診察では、口、心臓・呼吸、腸の動き、大泉門や鼓膜をしっかりとみます。
眼の潤い、尿量、皮膚を確認して、脱水がないかもみます。
2.どんな検査をしていますか?
3ヶ月未満の発熱でする検査は;
- 血液検査
- 尿検査
- 髄液検査(しないこともある)
です。
血液検査では CRPの値 (< 2.0 mg/dL)や白血球の値 (5,000〜15,000 /ml) を見て、感染の勢いを確認します。
尿検査では、尿に細菌が潜んでいないかを確認しています。
髄液検査は全例には行いませんが、1ヶ月未満であれば髄液をみることがほとんどです。
これらの結果から「重症の可能性がどの程度か」を総合的に判断しています。
入院の適応について
検査で異常を認め『重症感染症の可能性が高い』と判断したら入院します。
特に、生後1ヶ月未満の場合は、ほぼ全例が入院適応になります。
生後1ヶ月以上で、検査結果がそれほど悪くなくても、保護者に不安があれば入院して経過観察をすることも多いです。
自宅で様子をみれる場合
生後1〜3ヶ月で、見た目に活気があり、検査所見も悪くなければ、翌日に外来に通院してもらい、様子をみることもあります。
発熱している間、毎日外来に来てもらうことがほとんどです。
哺乳力低下、ひどい咳嗽、呼吸が苦しそうなど異常があれば、早めに受診するように促しています。
まとめ
小児科では3ヶ月未満のお子さんの発熱はかなり慎重に様子をみています。
もし、3ヶ月未満のお子さんが発熱した場合は、早めに入院できるくらいの大きな病院へ受診しましょう。
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