- 便秘には野菜を
- 食生活を改善させましょう
と、便秘の治療の際に、医療者からアドバイスされることがあるかもしれません。あるいは、便秘に食物繊維が効く、というのは、すでにご存知の保護者の方々も多いかもしれません。
今回は、小児の便秘において食物繊維の改善を含む包括的な介入が有効か検討した研究をご紹介します。
- 小児の慢性便秘を対象に行われた研究
- 宿便の解除、食物繊維の摂取の励行と緩下剤が有効かを検討
イギリスからの報告です。
食物繊維が便秘症の原因か?逆に便秘症の結果、食物繊維摂取が低下しているのか?
研究の背景/目的
慢性便秘は小児プライマリケア外来受診の3%~5%を占める。
このグループの中で最も重症の患者は,腸管の拡張に反応しない弛緩性結腸および遺糞症を発症する。
下剤および潤滑剤は、腸減圧期における標準的な治療薬である。また食物繊維はメンテナンスプログラムの要と考えられている。
これらの薬剤の各々は,一般的に文献においてかなりの不安を伴う。
研究の方法
この研究では, 高食物繊維と下剤の併用療法の安全性を, 6か月にわたる排便回数, 便失禁および栄養状態について評価した。
血液化学値, 食物繊維摂取, 排便パターン,および心理学的プロファイルを6か月の研究で評価した。
研究の結果
栄養状態の生化学的および身体計測的指標は治療により有害な影響を受けなかった。
75%の子供は便失禁はなく,残りの16人のうち4人は週に一度以下の便失禁の頻度になった。
結論
本研究は, 遺糞症の小児は, 有害な影響を経験することなく, 完全な腸洗浄後の繊維摂取の増加,緩下剤,およびミネラルオイルの併用プログラムに反応することを確認する。
考察と感想
少し補足してみようと思います。今回の研究は、4〜12歳の小児16例を対象に、便秘の治療が有効かを6ヶ月かけて検証した研究になります。
- 洗浄:浣腸など
- 食生活の指導:食物繊維を0.25 g/kg/日
- 維持:ミネラルオイルや緩下剤など
の多面的な介入を行なっています。
介入 | 前 | 中 | 後 |
食物繊維 g/kg/日 |
|||
6〜12歳 | 0.31 (0.07) |
0.61 (0.28) |
0.37 (0.07) |
4〜5歳 | 0.71 (0.1) |
横ばい | 横ばい |
便失禁 回/週 |
4 (2) |
0.2 (1) |
0.4 (0.2) |
便の重量 g/日 |
71 (11) |
128 (32) |
224 (54) |
水分量 % |
56% (7) |
59% (6) |
76% (4) |
便のdry weight |
30.8 (4.8) |
52.8 (13.4) |
42.9 (12.9) |
全てのデータが読み取れた訳ではないですが、便失禁の回数が減り、便の重量が増加し、改善しているのが分かります。
まとめ
今回の研究は、小児の便秘症において、宿便の解除、食生活の改善と緩下剤を使用して排便量や便失禁が改善するかを検討しています。
これらの組み合わせは、便秘の改善に有効そうなデータでした。
詳しいデータはnoteの方で執筆しています:
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし
知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。
感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/11/20 09:50:45時点 Amazon調べ-詳細)
絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし
こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/11/19 13:14:51時点 Amazon調べ-詳細)
絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし
こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。
(2024/11/19 13:14:52時点 Amazon調べ-詳細)
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/20 00:57:26時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
noteもやっています