- 『〇〇クリニックで、インフルエンザワクチンは1歳未満には効果がないと言われました』
- 『今、生後8ヶ月ですが、インフルエンザワクチンを接種したほうがよいですか?』
など、毎年のように同じ様な質問があります。先日も、泌尿器科の先生のお子さんのインフルエンザの予防接種について相談されました。医療者でも専門外だと、このあたりの知識が曖昧なことがありますね。
今回は、1歳未満(6〜12ヶ月)のインフルエンザワクチンについて解説していきましょう。
1歳未満の乳児へのインフルエンザワクチンのポイント
まずはポイントだけ押さえてしまいましょう:
- 生後6ヶ月からインフルエンザワクチンを接種できます
- 1歳未満のインフルエンザワクチン接種は抗体(免疫)がややつきにくいです
- 1歳未満にワクチン接種をすると、10-70%くらいの確率で抗体がつきます
- 同居するご家族も一緒にワクチンを受けましょう
インフルエンザワクチンの有効率を教えて下さい
『実際にインフルエンザワクチンは、こどもにどのくらい効くのですか?』
と、よく質問うけます。『昨年は接種したけど、効かなかった』『上の子の時のも効かずにかかってしまった』など、わりと不評の多いワクチンです。
これにはいくつか理由があり、
- 年ごとにインフルエンザの株が変異している
- 小児は抗体を獲得する確率が低い
の2つが主なところでしょう。
後者の「抗体獲得率」ですが、およそ;
- 乳幼児:25%
- 6歳以上: 25-40%
- 成人:70-90%
といわれています。
乳幼児で有効率が低いのは、インフルエンザへの暴露や感染の経験がなく、免疫記憶が不十分であるためといわれています。
1歳未満の子どものワクチンはどのくらい効きますか?
効果を比較するため、1歳未満と1−3歳の子どもの抗体の陽転率をみましょう。
抗体陽転率とは、ワクチン接種前と後に抗体がついたか血液検査で確認する検査です。 1歳未満では、抗体の陽転率は:
- 1回接種: A (H1N1) 型 1.2% A (H3N2)型 16.5% B型 0%
- 2回接種: A (H1N1) 型 31.8% A (H3N2)型 68.2% B型 11.8%
となります。
一方、1〜3歳の幼児では、ワクチン接種後の抗体陽転率は:
- 1回接種: A (H1N1) 型 45.1% A (H3N2)型 53.5% B型 32.4%
- 2回接種: A (H1N1) 型 70.4% A (H3N2)型 74.6% B型 59.2%
となっています。
1歳未満でも抗体を獲得できることはある
上のデータからわかるように、ワクチンは2回接種したほうが、抗体はつきやすいのが明らかです。
ですので、お子さんには2回接種を確実にしましょう。
時々ですが 「1歳未満はインフルエンザワクチンは免疫がつかないから、意味がない」 と主張する医師もいますが、これは間違いです。
実際のデータでは抗体はついています。 ただ、乳児の場合、抗体を獲得する確率が少し低いのです。
まとめ:1歳未満のインフルエンザワクチンについて
この結果から言えること この結果から、重要なことが3点いえます;
- ワクチンはきちんと2回接種しましょう
- 1歳未満は免疫が全くつかないわけではありません
- ご家族の型も一緒にワクチンをうけましょう
です。
赤ちゃんを守るためにも、ご家族の方も一緒にワクチンをうけましょう。
また、小さいこどもがインフルエンザに罹ると重症になりやすいです。
アメリカでは2004年から6〜24ヶ月のこどもに対してインフルエンザを定期接種にしています。
1歳未満でもワクチン接種を基本的にオススメします。
参考文献
- 庵原俊明:インフルエンザワクチンの効果.化学療法の領域. 2011; 27: 2684-2693.