インフルエンザワクチンによってインフルエンザ感染を予防できる、または重症化を予防できると考えられていますが、乳幼児に関して、かつて使用すべきか否かは賛否両論でした。
近年は、様々なRCTが行われ、基本的に乳幼児へのインフルエンザワクチンの有効性は確認され、様々な団体は推奨しています。
今回は、少し古い論文ですが、6−24ヶ月の乳幼児を対象にRCTが行われていたので、そちらをご紹介させていただこうと思います。
- 6-24ヶ月において、インフルワクチンの効果を検証
- インフルエンザへの感染予防の効果はありそう
- 中耳炎も予防できるかは追加検証が必要な内容
研究の方法
今回はアメリカのピッツバーグで行われたRCTです。
対象となったのは、
- 6-24ヶ月
- 健常な小児
などが該当しています。1999/2000と2000/2001のシーズンで研究が行われています。
治療について
治療は、
- インフルエンザワクチン
- プラセボ
のいずれかをランダムに投与しています。
ワクチンは、0.25 mlを2回投与しています。
アウトカムについて
アウトカムに関しては、
- インフルエンザ感染
- 中耳炎
- その他、医療機関受診など
を評価しています。
研究結果と考察
最終的に786名が研究に参加し、解析の対象となっています。6-12ヶ月の乳幼児は4-5割程度です。
インフルエンザの予防効果
まずはインフルエンザの予防効果を見てみましょう:
99/00 | リスク | リスク比 | VE |
ワクチン | 15/273 (5.5%) |
0.34 (0.18, 0.64) |
65.6% (35.7, 81.5) |
コントロール | 22/138 (15.9%) |
Ref | Ref |
1999-2000年に関しては、インフルエンザの予防効果を認めています。
2000/01 | リスク | リスク比 | VE |
ワクチン | 9/252 (3.5%) |
1.10 (0.35, 3.50) |
-9.8% (-250, 65.5) |
コントロール | 4/123 (3.3%) |
Ref | Ref |
2000-2001年に関しては、予防効果はありません、
ただ、コントロール群を見ると、2000-2001年はかなりインフルエンザ感染者が少ないので、ワクチン効果を検出しづらい環境だったのかもしれません。
2年分の結果を考慮してメタ解析をしてみましたが、以下の結果です:
少なくともワクチンの効果は全体としてはありそうですね。
中耳炎の発症率について
中耳炎の発症率はほとんど2グループで変わりませんでした:
ワクチン | プラセボ | |
99/00 | 79/259 (30.5) |
40/134 (29.9) |
00/01 | 125/239 (52.3) |
49/116 (42.2) |
ただ、この結果はやや混乱を招く内容で、インフルエンザに関連した中耳炎だけでなく、風邪などに随伴したものも混入してしまっています。
インフルエンザによる中耳炎のみを対象にしたデータも提示すべきかと思いました。
このデータも掲載されてはいるのですが、インフルエンザ感染者が分母になっており、やや疑問の残る報告の仕方です。
医療リソースの利用について
ER受診など医療リソースの利用も比較しています:
99/00 | ワクチン | プラセボ |
主治医受診 | 1.97 (1.69) |
2.07 (1.52) |
ER受診 | 0.19 (0.48) |
0.18 (0.49) |
入院率 | 33 (12.4) |
17 (12.7) |
抗菌薬使用率 | 1.79 (2.36) |
1.92 (2.37) |
1999-2000年のシーズンに関しては、どのアウトカムもほとんど変わらないですね。
00/01 | ワクチン | プラセボ |
主治医受診 | 2.2 (1.75) |
2.12 (1.77) |
ER受診 | 0.3 (0.58) |
0.31 (0.56) |
入院率 | 33 (13.4) |
7 (5.9) |
抗菌薬使用率 | 2.04 (2.57) |
1.66 (1.76) |
2000-01年のシーズンに関しては、どのアウトカムもほとんど変わらないですね。
どちらのシーズンも、入院率が高いように思うのは、気のせいでしょうか。健常児の入院率が5-10%超えるのは、少し普通じゃない気がするのですが…
感想と考察
今回の研究は、6-23ヶ月の乳幼児を対象に、3価のインフルエンザ不活化ワクチンの有効性を検証しています。
シーズンにもよりますが、インフルエンザ感染に対する予防効果を認めています。
一方で、中耳炎の発症率や医療リソースの利用率、入院率などを比較していますが、ワクチンを使用しても改善していない印象です。ただ、中耳炎のカウントの仕方や、入院率が高すぎるなど、やや疑問の残るデータです。
まとめ
アメリカで行われたRCTによると、インフルエンザワクチンは、6-23ヶ月の乳幼児のインフルエンザ感染に対する予防効果を認めています。
一方で、中耳炎の発症率や医療リソースの利用率も解析していますが、解析方法やデータそのものにやや疑問点が残る内容でした。
インフルエンザワクチンは…
- 6-24ヶ月において、インフルエンザへの予防効果はありそう
- ただし、年度によって予防効果は異なる
- 中耳炎も予防できるかは追加検証が必要