冬の季節になると「乳幼児にインフルエンザワクチンは効くのですか?」と質問されることがあります。また、中には「小さいお子さんにはワクチン効かないから打たなくて良い」とまで指導する医師がおり、少し頭を悩ませています。
乳幼児にインフルエンザワクチンは有効性はありますし、感染予防だけでなく重症化の予防も目的にしています。今回は、有効性が示唆された論文があるので、そちらを確認していきましょう。
先にポイントだけ載せてしまいます。
- 6〜11ヶ月でも、インフルエンザワクチンは有効
- 有効性(VE)は30%ほどと、成人より低め
- 2回接種することで、VEは45%くらいまで上昇
【更新】乳児へのインフルエンザワクチンの有効性に、疑問符をつける方もいらっしゃいますが、2歳未満への大規模ランダム化比較試験が実施され、有効性が証明されています。
ただし、限定的であるともいえるようです。
https://t.co/Vpdje58eOR @ped_allergyさんから— ほむほむ@アレルギー専門医 (@ped_allergy) September 26, 2018
こちらの論文は、ほむほむ先生(@ped_allergy)から勉強させていただきました。
研究の方法
今回の研究は、2010年8月〜2014年3月にバングラディッシュのダコタで行われたRCTです。
対象となったのは、
- 6〜23ヶ月の乳幼児
- 基礎疾患なし
などが該当しています。
治療について
治療は、
- インフルエンザワクチン(Inactivated influenza vaccine)
- 不活化ポリオワクチン(IPV)
のいずれかをランダムに投与して、その後1年間発熱・呼吸器疾患を追跡しています。
アウトカムについて
アウトカムに関しては、
- インフルエンザ(PCRで確定)
を見ています。
この研究ではperson-time法を使用しており、VE (=vaccine efficacy)は(1 – rate ratio) x 100%で推定しています。
研究結果と考察
最終的に4081人が参加し、5169 person-yearsの追跡をしています。
- インフエンザワクチン:2576 person-years
- ポリオワクチン:2593 person-years
となります。
1歳未満は全体の3割、男女比はほぼ1:1でした。
全体の有効性
ワクチン | インフル | ポリオ |
インフル+ | 200 | 209 |
PYs | 2009 | 2034 |
IR | 9.95/100 PY | 14.45/100 PY |
IRD | – 4.5/100PY | |
IRR | 0.69 [0.57–0.83] | |
VE | 31% [18–42%] |
全年齢での有効性を評価したものはこちらになります。
インフルエンザワクチンを使用したグループの方が、インフルエンザに罹患する率(rate)が30%ほど低下しているのが分かります。
12ヶ月未満について
「6〜12ヶ月はインフルエンザワクチンが効かない」とまでいう小児科医が時々いますが、実際のところ結果はどうでしょうか。
ワクチン | インフル | ポリオ |
インフル+ | 57 | 87 |
PYs | 648 | 664 |
IR | 8.8/100 PY | 13.1/100 PY |
IRD | – 4.3/100PY | |
IRR | 0.67 [0.48–0.93] | |
VE | 33% [6.8–51.9%] |
年齢で層別化した解析をしていますが、6〜12ヶ月の乳児でもワクチンの有効性は示唆されています。この研究全体の結果と変わらないですね。
2回接種した場合
2回接種した場合の方が、ワクチンの有効性は高く推定されています。
- VE, 44.1% [27.1%, 57.1%]
初めてインフルエンザワクチンを接種する小児より、2回目以降の小児の方が有効性は高そうです:
- 初回:VE, 26.1% [9.2, 39.8]
- 2回目:VE, 45.0% [20.1, 62.2]
感想と考察
今回の研究ですと、年齢によってワクチン効果はそれほど変わらない印象ですね。
考察と感想
「乳幼児にはインフルエンザワクチンの効果はないから、接種すべきでない」と指導する医師(小児科医含む)がいるのは事実です。ですが、古いデータに基づいており、これは正確ではありません。
今回の研究でも、インフルエンザワクチンの効果は6−11ヶ月児でも認めています。
一方で、ワクチンの有効性自体は、やや低めの結果です。およそインフルエンザワクチンの有効性は70%ほどと言われていますが、今回はそれより低い値です。
乳幼児はインフルエンザに罹患した場合、熱性けいれんを起こしたり、重症化して入院が必要になるケースもあります。そういった背景も考慮して、ワクチン接種すべきか判断する必要があります。
まとめ
今回の研究では、6-11ヶ月でもインフルエンザワクチンの有効性を認めていました。
2回接種していた方が有効性は強く出ており、確実に接種しておきたいところです。
乳幼児においてインフルエンザワクチンは…
- 有効性は6〜24ヶ月でも示唆されている
- 2回接種は確実にしておきたい