- インフルエンザワクチンは乳幼児には効かない
- 効果はわずかだから打たなくて良い
このような指導をしている医師(小児科医を含む)がかなりの数でいます。おそらく随分と古いデータをもとにこのような発言をしているのだと推察していますが、近年は有効性を示唆した論文はいくつか出てきています。
また、CDCやWHOといった公的機関は、「2〜5歳以下の小児は、優先的に接種」といった推奨も出しています。合併症を起こすリスクなどを考えれば、この年齢層にプライオリティーがつくのも納得です。
今回は、欧州・中央アメリカ・アジアといった複数の施設で大規模に行われた研究がありますので、そちらの結果を参照してみましょう。
先に結論だけ述べてしまいますね。
生後6〜35ヶ月のインフルエンザワクチンは…
- インフルエンザ感染への予防効果あり
- 重症化や医療機関受診率を下げる
- 抗菌薬の使用リスクを下げる
すでに、ほむほむ先生(@ped_allergy)もトピックにされているようですので、こちらも参照してみてください。
【NEW!】インフルエンザワクチンはシーズンごとに有効性の差があるという報告はあります。
今回は、3歳未満12000人以上のランダム化比較試験で4価インフルエンザワクチンの有効性をその型を含めて検討した報告をご紹介します。https://t.co/RH3kogp4a0— ほむほむ@アレルギー専門医 (@ped_allergy) October 9, 2019
研究の方法
今回の研究は、12,000人の6−35ヶ月の小児を対象に、欧州・アジア・中央アメリカの13カ国で行われた研究です。
対象となったのは、
- 6~35ヶ月
- 6ヶ月以内にインフルエンザワクチン接種なし
などが該当しています。
治療について
治療は、
- 4価インフルエンザワクチン(IIV4)
- コントロール(肺炎球菌・A型肝炎・水痘ワクチンのいずれか)
のいずれかをランダムに投与しています。
アウトカムについて
アウトカムに関しては、
- インフルエンザの感染率
- 医療機関への受診率・入院率
- 抗菌薬の使用率
などを見ています。インフルエンザウイルスはPCRを使用して確認しています。
研究結果と考察
最終的に12,018人の小児が参加しました。年齢の中央値は22ヶ月、男女比はほぼ1:1でした。99.2%の参加者は、これまでインフルエンザワクチンを接種したことがない方です。
ワクチンの有効性(Vaccine efficacy)
IIV4 | Control | VE, % | |
N | 5704 | 5697 | |
M-to-S Flu | 90 (1.58%) |
242 (4.25%) |
63.2 (51.8 to 72.3) |
All type | 344 (6.03%) |
662 (11.6%) |
49.8 (41.8 to 56.8) |
Matched Strain |
88 (1.54%) |
216 (3.79%) |
60.1 (49.1 to 69.0) |
(M-to-S = 中等〜重症の疾患:下気道感染、中耳炎、高熱など)
インフルエンザといっても発熱や風邪症状で済むこともあれば、気管支炎・肺炎・中耳炎を起こしてしまうことがあります。
それを加味した解析ですが、重症化の予防という点からでも、有効性は十分ありそうですね。
年齢で層別化
月齢 | IIV4 | Control | VE |
6-17 | 30 (1.53) |
59 (2.98) |
48.8 (21.2 to 67.4) |
18-35 | 61 (1.51) |
190 (4.71) |
68.5 (58.2 to 76.5) |
年齢で分けてみても、効果はありそうですね(中等〜重症のインフル)。
6ヶ月〜1歳半でも有効性は認めていますが、1歳半以降よりやや有効性は低そうですね。
その他
その他のアウトカムも比較しています。
IIV4 N=6006 |
Control N=6012 |
RR (95%CI) |
|
医療機関受診 | 310 (5.2%) |
583 (9.7%) |
0.53 (0.46 to 0.61) |
抗菌薬の使用 | 172 (2.9%) |
341 (5.7%) |
0.50 (0.42 to 0.60) |
救急外来受診 | 7 (0.1%) |
33 (0.5%) |
0.21 (0.09 to 0.47) |
入院 | 3 (0.0) |
7 (0.1) |
0.43 (0.11 to 1.66) |
6−36ヶ月の乳幼児にインフルエンザワクチンをすると、
- 外来受診が減る
- 抗菌薬の使用量が減る
- 救急外来の受診リスクが減る
- 入院リスクが減るかもしれない
といった結果が出ていますね。
感想と考察
かなり実臨床に重きを置いた研究でしたね。
外来受診率や入院率も見ており、非常に面白い結果でした。大人ほどではないですが、インフルエンザ感染予防になっていますし、重症化の予防、医療機関受診率の低下、抗菌薬使用率の低下など、いろいろな恩恵があるのではないでしょうか。
インフルエンザそのものを予防するのも大事ですが、重症化して外来を受診したり、抗菌薬を投与したり、入院をしたり、小さなお子さんを連れての医療機関は保護者としても大変なのではないでしょうか。この辺りの評価してくれていて、ありがたいですね。
まとめ
今回の研究では、4価のインフルエンザワクチンを6-36ヶ月の乳幼児に使用し、
- インフルエンザ感染予防
- 重症化の予防
- 医療機関受診リスクの低下
- 抗菌薬の使用率の低下
などを認めていました。
生後6ヶ月〜35ヶ月のインフルエンザワクチンは…
- インフルエンザを予防する
- 重症化も予防する
- 医療機関受診率や入院率も下げる
- 抗菌薬の使用率も下げる