便秘について相談した場合、「運動をしましょう」とアドバイスを受けたことがあるかもしれません。一方で、「運動は便秘を改善さえる」のは本当でしょうか?
今回は、高齢者において、運動が便秘の改善に役立つのか研究した論文をご紹介しようと思います。
- アメリカで行われたランダム化比較試験
- 高齢者において、食事・運動療法が便秘の改善に有効かどうか検証
- 便秘症は改善する傾向にあった
2010年に公表されたようです。
食事・運動は便秘症の改善に有効?[アメリカ編]
研究の背景/目的
便失禁および尿失禁のアウトカムに対して、介入可能な因子の効果を評価することを目的に、今回の研究が行われました。
研究の方法
本研究は、6つの介護施設、11,912名入居者を対象に、ランダム化比較試験が慢性的な便秘を有する125名の肥満女性(年齢20~40歳)を対象とした。
対象となった患者には、
- 排泄の介助
- 運動
- 食事と水分摂取の選択
を3ヶ月にわたって行われました。
アウトカムは、便失禁および尿失禁の頻度、研究スタッフからの直接チェックにより決定された適切なトイレの割合が記録されています。
さらに、肛門の評価は、29人の居住者のサブセットについて行われた。
研究の結果
両介入により、身体活動、トイレの頻度、および食事と水分の摂取が有意に増加した
さらに、尿失禁は改善し(P=.049)、排便頻度(P<.001)およびトイレでの排便の割合(P<.001)も改善した。
一方で、便失禁の頻度は変化しなかった。
肛門検査を受けた被験者の89%では排便パターンに異常が認められ、今回の介入がベン失禁Iに対して有効性の欠如を説明することができた。
結論
今回の介入は、尿失禁と便通は改善したが、便失禁に対しては効果がなかった。
協調性のない排泄パターンやおよび直腸の感度の低下は、今後の介入では、腸機能を改善するために増量剤(ファイバー)、バイオフィードバック療法、またはその両方を補充しなければならない可能性を示唆している。
考察と感想
Abstractだけですと、理解は難しいですね。詳しく知りたい方は、オープンアクセスですので、リンク先を参照してみてください。
小児の便秘と運動のことを調べていたら、成人の論文に遭遇してしまいました。この研究は対象年齢は85歳で、数多くの合併症があったようです。
運動に関しては、それを計測する機器を身につけて、継続してモニターすることで、運動の機会を増やしたようです。
食事に関しては、摂取量と水分量を増加するように工夫したようです。
便秘の推移に関してはどうでしょうか。
介入 | なし | あり |
前 | 44/54 (81.4%) |
45/58 (77.5%) |
後 | 51/54 (94.4%) |
30/58 (51.7%) |
前後差 | +7.0% | -26.8% |
介入あり/なし、介入の前後でみると、明らかに便秘は改善しているのが分かりますね。
まとめ
介護施設に入所している老人に対して行われたランダム化比較試験でした。
食事や運動の介入をすることで、便秘は改善する傾向にあったようです。
詳しいデータはnoteの方で執筆しています:
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
絵本:目からはいりやすいウイルスのはなし
知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。
感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/12/21 11:30:52時点 Amazon調べ-詳細)
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/21 02:10:50時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
noteもやっています