科学的根拠のある子育て・育児

フルーツジュースと乳幼児の下痢について

生後36ヶ月未満の、原因不明の慢性的な(3週間以上)の下痢症のことを、

  • 慢性非特異的下痢
  • Chronic non-specific diarrhea (CNSD)
  • Toddler’s diarrhea

などと呼ばれています。

平たくいうと、乳幼児のよくわからない慢性的な下痢ですが、その原因の1つにフルーツジュースの過剰摂取もあることが示唆された研究結果があります。

 

研究の方法

慢性の非特的な下痢のあるこども、つまり

  • 3ヶ月以上にわたり
  • 1日2回以上の下痢がある
  • 生後14〜17ヶ月

の小児が研究に参加しました(N = 7)。コントロールとして9〜36ヶ月の健常な小児が13名参加しています。

12時間ほど空腹にして、なし・りんご・白ぶどう・2%ソルビトールジュースを150〜240 mlほど飲ませて、呼気中水素の濃度を計測しています。

この検査で、呼気中の水素濃度が10 ppm以上のときに「炭水化物の消化不良がある」と判断しています。

研究結果と考察

 

飲料水別にみた平均呼気中水素濃度

それぞれの飲料の結果をみてみましょう。呼気中水素濃度の平均を比較しています。

飲料水別にみた平均呼気中水素濃度は以下の通りでした:

 

コントロール

CNSD

りんごジュース

21
(6)

15
(3)

ぶどうジュース

7
(2)

6
(2)

なしジュース

54
(10)

70
(15)

ソルビトール

34
(5)

41
(13)

 

慢性的な下痢のある小児も健常な小児も、ジュースを内服した後の反応は似通っていて、なし> ソルビトール> りんご>ぶどうジュースの順に呼気中水素濃度が高い傾向にありました。

ソルビトールやなしジュースを飲んだ後の呼気中水素濃度は、CNSDのある小児のほうがやや高いですが、統計学的な有意差はありませんでした。

そのほか

CNSDの有無に関わらず、40%ほどの参加者がりんご、なし、ソルビトール飲料のいずれかを内服後に腹部膨満・下痢・腹痛を起こしています。

さらに7人のCNSDの患者にフルーツジュースを制限したところ、3人は完全に軽快しました。この3人はりんご、なし、ソルビトール飲料のいずれかを内服後に腹部膨満・下痢・腹痛を起こしていたようです。

感想と考察

慢性的な下痢の有無にかかわらず、りんご、なし、ソルビトール飲料を飲むと消化不良が起こりやすい傾向にありました。
さらに、フルーツジュースを制限することで、慢性的に持続した下痢が改善しています。

使用されたジュースの炭水化物の内訳は以下の通りでした:

 

F

G

Suc

Sor

Osm

りんご

6.2

2.7

1.2

0.5

638

ぶどう

7.5

7.1

 

 

1030

なし

6.4

2.3

0.9

2.0

764

sorbitol

 

 

 

2.0

142

(F, フルクトース; G, グルコース; Suc, スクロース; Sor, ソルビトール; Osm, 浸透圧)

ぶどうジュースは浸透圧が非常に高いですが、必ずしも消化不良になるわけではなさそうですね。
りんごや梨はご存知かもしれませんが、ソルビトールの量が多く、下痢の原因になりえます。

いっぽうで、今回の研究のみで、フルーツジュースが下痢と強い相関があるかは少しジャッジが難しい気がしました。
水やお茶、経口補水液との比較をしたりしたら、もう少し解釈がわかりやすかった気がしますが。

確かに一部のお子さんはフルーツジュースをやめることで下痢が改善しています。ですが、これは3た論法(使った、治った、効いた)であり、有効性ありとするには少し無理があるかもしれないですね。実際にどのくらい有効かは、もう少し規模の大きな研究も必要と思います。

まとめ

慢性的な下痢の有無にかかわらず、りんご、なし、ソルビトール飲料を飲むと消化不良が起こりやすい傾向にありました。
さらに、一部のお子さんになりますが(3/7)、フルーツジュースを制限することで、慢性的に持続した下痢が改善しています。

 

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。