熱性けいれんのポイント
- 熱性けいれんとは、38℃以上の発熱に伴って起こる痙攣です
- 乳幼児の100人中7-8人は起こします
- 熱性けいれんにより、知能低下や脳障害は起きません
- 発作が5分以上続く場合、救急車を呼んで医療機関に受診しましょう
- 短い発作を何度も繰り返す場合も、病院へ受診してください
熱性けいれんの特徴
熱性けいれんは、38℃以上の発熱に伴っておこる痙攣(ひきつけ)のことをいいます。
特に高熱が起きた時、白目をむき、全身が突っ張り、ガクガクと手足を震わせます。
発熱後、数時間以内の発作が起こりやすいです。
また、痙攣が起こった後の1〜2時間以内に、38℃以上に発熱した場合も熱性痙攣として扱います。
熱性けいれんの頻度と起こりやすい年齢
熱性痙攣は、乳幼児期に起こりやすく、5歳以下がほとんどです。
日本人に非常に多く、7%〜8%のお子さんで起こります。
欧米では2%〜5%程度ですので、人種差が大きいのが分かるでしょう。
熱性けいれんの診断について
熱性けいれんと診断するには、発作の原因となる疾患がないこと、を証明する必要があります。(例えば、中枢神経感染症、代謝異常などです)
熱性痙攣の種類
熱性痙攣には2種類あり:
- 単純型熱性けいれん
- 複雑型熱性けいれん
です。
単純型熱性けいれんの特徴
単純型熱性けいれんの特徴は
- 全身性で、左右対象に起こる発作
- 短時間(< 20分)
- 単発の発作(24時間以内に繰り返さない)
です。
これらの特徴が当てはまらない場合、「複雑型熱性けいれん」といいいます。
熱性けいれんのデータ
熱性痙攣の頻度は、6ヶ月〜5歳が多いです。
発症のピークは1〜2歳で、約8割は3歳までに発症します。
日本人の7%〜8%程度が発症します。
欧米では4%程度ですので、頻度を比較すると、日本人に多いのが分かるでしょう。
原因として、日本人の遺伝子の問題や鉄欠乏性貧血がいわれています。
熱性けいれんの再発率について
熱性けいれんを発症した子で、50%程度は再発しません。
逆にいうと、残りの50%は2回以上起こす再発型であるといえます。
特に、家族(兄弟、父母)で熱性けいれんを起こした人がいる場合、再発は起こしやすいです。
もし熱性痙攣が起きてしまったら...
痙攣(ひきつけ)が起きてしまったら:
- まず、落ち着きましょう。
- お子さんの身体を横向きに寝かせましょう(嘔吐による誤嚥を防ぐためです)
- 痙攣の持続時間を計ってください
- 5分以上続く場合、救急車を読んで医療機関を受診しましょう
短時間で痙攣が止まった場合も、医療機関に受診することをオススメします。
けいれんがすぐに止まりました
けいれんが治まって落ち着いている場合は、救急車でなく自家用車で受診してもよいでしょう。
初めてのけいれんであれば、基本的に医療機関への受診をお勧めしています。
けいれん時にやってはいけないこと
痙攣(けいれん、ひきつけ)時、ついつい誤って行動をしてしまいます。
代表的な危険行為は:
- 口の中に、割り箸やハンカチなどのモノを入れる
- 舌を噛まないように、指を入れる
の2つです。
非常に危険な行為ですので、やめましょう。
口の中に異物を入れる行為は、誤嚥や窒息の原因となります。
痙攣時には、意識がありませんので、吐き出すことも上手にできません。
ですので、異物は極力いれないようにしましょう。
舌を噛まないように指をいれる方もいますが、これも指をかまれるためやめましょう。
乳幼児とはいえ、咬む力は非常に強いため、指が重傷を負う場合があります。
咀嚼する筋肉は、人間の体で最も強い筋肉といわれています。
自然に痙攣が止まった場合
熱性痙攣は5分以内に止まることが多いです。
5分以内に痙攣(ひきつけ)が治まったら:
- 呼びかけの反応、視線があうかなどを確認
- 痙攣後に医療機関を受診しましょう
「大丈夫!」 と自己判断しないようにしてください。
熱性けいれんの再発予防薬 (ダイアップ) について
熱性痙攣を繰り返すお子さんにはダイアップが処方されることがあります。
どの子にけいれん止めの座薬を使用したらよいかは、専門家により意見が異なりますが、以下の基準を満たす場合には、ダイアップを使用せずに様子を見ることもあります:
- 単純型熱性けいれんが2回以内
- 発症前の明らかな神経学的異常や発達の遅れがない
- 両親・兄弟にてんかんの家族歴がない
- 1歳以上の発症
- 両親または片親の熱性けいれんの既往がない
です。
上の基準を満たさない場合や、20分以上続く痙攣を起こす場合には予防的に投与することがあります。
けいれん止めの座薬の有効性について
ダイアップ(ジアゼパム)坐剤は再発率を40%くらい低下させますが、眠気やふらつきの副作用があるため、使用するかどうか慎重に検討しましょう。
治療を開始した場合、最終発作から1〜2年程度を予防投与として使い、4〜5歳までに終了することが多いです。
ダイアップ坐剤(ジアゼパム)の使用法
熱性痙攣は体温が急激に上昇する時に起こりやすいです ですので、ダイアップ(ジアゼパム)坐剤を使うタイミングは
- 37.5〜38.0℃以上の発熱に気がついた時に1回目
- 38℃以上の発熱が続く時に2回目
を使用します
通常はこの2回投与で終了となります。
坐薬が出て来てしまいました
坐薬を使用した場合、挿入から15-30分くらいは、肛門からもれていないか確認しましょう。
15分以内に、明らかに坐薬の形状のまま排泄された場合は、再挿入してよいでしょう。
解熱剤の坐薬も使いたいです
解熱剤の坐薬を使用する場合には、ダイアップ坐薬を使用してから、30分は間隔をあけましょう。
けいれん止めの坐薬の副作用
一時的に眠気、ふらつき、興奮状態になることがあります
薬の効果が弱まってくると徐々に症状は軽くなります
副作用の症状が強い場合や、長く続くような場合、処方した医師に相談しましょう。
抗けいれん剤で「熱性けいれん」から「てんかん」への移行を阻止できますか?
熱性けいれんから「てんかん」に移行するこは割合は少ないです。
ですが、3〜5%くらいは「てんかん」へと移行します。
「てんかん」とは、本人のもっている「けいれんを起こしやすい」素因です。
ですので、抗けいれん剤で予防はできません。
もし「てんかん」へ移行した場合は、抗てんかん薬による治療を開始しましょう。
小児神経の専門家に受診するのをオススメします。
どのくらいの確率で再発しますか?
再発率に関してですが:
- 初回の熱性けいれんの場合、再発率は30%
- 2回目の熱性けいれんの再発率は50%
- 12ヶ月未満の再発率は50%
といわれています。
解熱剤は使っても良いのですか?
解熱剤の使用は可能です。
しかし、解熱剤はけいれん発作を予防することができないことがわかっています
解熱剤使用の目的は、お子さんの発熱という苦痛を取り除いて上げる点にあります
「解熱剤の効果がきれて、体温が上昇する時にけいれんが誘発されるので、解熱剤の使用はすべきでない」
と言っている方もいますが、これを指示する科学的根拠は全くありません。
いわゆる都市伝説です。
ですので、 熱が辛いなら、解熱剤を使用してもよいでしょう。
◉ こちらが熱性けいれんの診療ガイドラインです。医療従事者は一読しておくと良いでしょう。
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