感染予防といえば、手洗い・マスク・うがい、などと言われています。
これまで、手洗いとうがいのエビデンスは沢山解説してきましたが、うがいはどうでしょうか。
カナダで行われた研究で、うがいの有効性を検証した論文がありますので、今回はそちらを解説していきます。
- うがいの有効性を検証したカナダでのRCT
- ビタミンDは有効性が示唆される結果
- うがいは有効性はなさそう
症例対照研究で、うがいの有効性を比較しています。
研究の概要
背景
- ビタミンD3補給(1万国際単位/週)vs. プラセボ
- うがいあり vs. うがいなし
が、大学生におけるウイルス性上気道感染症 (URTI) を予防できるかどうかを評価するために、 2 X 2のfactorialデザインで、ランダム化比較試験 (RCT) を行った。
方法
600名の学生を、
- ビタミンD3とうがい
- プラセボとうがい
- ビタミンD 3とうがいなし
- プラセボとうがいなし
の4グループにランダム化した。
うがいは、水道水30mlで、1日2回するように指導されています。
学生は毎週の電子調査をし、 2010年または2011年の9月と10月の間に、スワブを使用して鼻腔のぬぐい液を自己収集した。
主要および副次エンドポイントは、臨床的に判断 or 臨床検査で確認された上気道感染症と臨床検査であった。
結果
600人の参加者の中で、 471人 (78.5%) は全ての調査を完了し、解析の対象となった。最終的に、150人 (25.0%) が臨床URTIを報告した。
ビタミンD3の効果について
ビタミンD3の有無と臨床的に診断された上気道感染症のリスクは以下の通りであった:
ビタミンD3 | プラセボ | |
N | 258 | 234 |
上気道炎 | 91 (30.3%) |
114 (38%) |
- RR:0.79 [95%CI:0.61~1.03]
うがいの効果について
うがいあり | うがいなし | |
N | 256 | 236 |
上気道炎 | 85 (32.2%) |
65 (27.5%) |
うがいをしたグループのほうが、やや上気道炎のリスクは高かったようです。リスク比にすると [RR:1.3, 95%CI:0.92~1.57]です。
結論
これらの結果は、ビタミンD3が上気道感染症の予防のための有望な介入であることを示唆している。
一方で、うがいに関しては有効性は示唆される結果ではなかった。
感想と考察
ビタミンDの有効性は他の研究でも示唆されていますね。
いっぽうで、うがいに関しては有効性が示唆されない結果でした。コンプライアンスなどはみておらず、実際、どのくらいの実施率かは気になるところですね。
あと、2 x 2のfactorial designですが、データがこの通りに提示されておらず、気になってしまいました。
まとめ
今回の研究では、カナダの大学生を対象に、うがいとビタミンDが上気道感染症に有効かを検証しています。
ビタミンDに関しては有効性が示唆される結果でしたが、うがいはそうでもありませんでした。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/21 02:10:50時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について