グアイフェネシン(guaifenesin)という薬をご存知でしょうか。
実は成人・小児の市販薬に含まれていることがあります。例を挙げると、
- ムヒこどもかぜシロップ
- キッズバファリンかぜシロップ
- 小児用一風飲「コタロー」 30mL
があげられます。
(*推奨ではありません)
グアイフェネシン(guaifenesin)は「気道の分泌物を増やして、痰を柔らかくし、排出しやくする薬(去痰薬)」として知られています。
古くから使用されていた薬のため、市販薬に含まれることがあるのでしょう。
今回は、この成分が実際に風邪において有効かを検討した研究をご紹介してみようと思います。
- 20-60歳の急性呼吸器感染症において、グアイフェネシンの有効性を検討
- グアイフェネシンを使用しても、痰の粘稠度や弾性、クリアランスなどに影響しなかった
お薬検索というサイトで「グアイフェネシン」と入力すると、44種類の市販薬が出てきました。
グアイフェネシンは、かぜによる痰のクリアランスに有効か?
研究の背景
観察研究の結果によると、グアイフェネシン (GGE) の経口投与は、下気道分泌物を薄くする可能性が示唆されている。
一方で、気道感染症の際に、粘膜繊毛と咳クリアランス (MCC/CC; mucociliary and cough clearance) に対する効果は検討されていない。
研究の方法
本研究は、急性上気道炎に罹患した非喫煙成人(20〜60歳)における二重盲検ランダム化比較試験である。
研究者らは、Mucinex® 1200 mg (2×600 mg徐放錠)の単回投与の効果を検証した。
アウトカムは、
- 吸入放射性粒子(Tc 99 m-硫黄コロイド)の肺からの除去率から得られるMCC/CC
- 喀痰動的レオロジー(応力/歪みクリープ変換の曲線の線形部分にわたる)
- deNouyリング法による界面張力
- 自覚症状測定
で評価した
朝にMCC/CCを計測し(期間1)、薬物(19例)またはプラセボ(19例)を内服した4時間後の午後(期間2)と比較した。
期間1と2の被験者は, CC測定のための放射性標識エアロゾル吸入後60から90分の間に60回の自発的な咳を行った。喀痰の特性は、治療後の咳期間中に喀痰した被験者から測定した(各コホートn=8~12)。
研究の結果
プラセボと比較してMCC/CCに対するグアイフェネシン (GGE) の効果は認められなかった。
60分までの期間1対2のMCCは、
- 8.3対11.8% (プラセボ)
- 9.7対11.1% (薬剤)
であった。
期間1対2のCCは
- 9.9対9.1% (プラセボ)
- 10.8対5.6% (薬剤) (NS)
であった。
薬剤またはプラセボ投与後の喀痰の特性に差はほとんどなかった。
結論
急性上気道炎の成人において、プラセボと比較して、グアイフェネシン (GGE) の単回投与はMCC/CCまたは喀痰の生物物理学的特性に対する効果は、はっきりと認められなかった。
ClinicalTrials.gov :NCT 01114581。
考察と感想
グアイフェネシンの使用は,プラセボと比較して, 痰や咳のクリアランスや、痰の性状はほとんど改善しなかったようですね。
痰の性状は、粘稠性、弾性、インピーダンスあたりが指標のようです。
グアイフェネシンは、気道分泌物を増加し、痰を柔らかくするため、排出しやすくなるといわれていましたが、矛盾する結果ですね。
気がかりなのは、1回投与のみの結果という点でしょうか。
複数回内服して効果が徐々に出てきたりするケースだと、この研究では捉えきれていない可能性もあります。
ただ、かなり手の込んだ研究なので、複数回の計測は費用的にも難しいのかもしれないですね。
まとめ
今回は、アメリカの20-60歳の急性呼吸器感染症において、グアイフェネシンが痰や咳のクリアランスや痰の性状に与える影響を検討しています。
グアイフェネシンを使用しても、痰の粘稠度や弾性、クリアランスなどに変化はみられなかったようです。
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