グアイフェネシン(guaifenesin)という薬をご存知でしょうか。
実は成人・小児の市販薬に含まれていることがあります。例を挙げると、
- ベンザブロックSプレミアム
- ミルコデ錠
- 小児用一風飲「コタロー」 30mL
があげられます。
(*推奨ではありません)
グアイフェネシン(guaifenesin)は「気道にからんだ痰を咳で出しやすくする医薬品(去痰薬)」として知られています。
このため、咳や痰がらみを軽快させるのを目的に、市販薬に含まれることがあるのでしょう。
今回は、この成分が実際に風邪において有効かを検討した研究をご紹介してみようと思います。
- アメリカの12歳以上の急性呼吸器感染症において、グアイフェネシンの有効性を検討
- グアイフェネシンを使用しても、痰の粘稠度や弾性、1日の痰の量などに変化はみられなかった
お薬検索というサイトで「グアイフェネシン」と入力すると、44種類の市販薬が出てきました。
市販薬に含まれるグアイフェネシンは、風邪(咳・鼻水)の症状に有効か?
研究の背景
グアイフェネシン(glyceryl guaiacolate ether [GGE])は、咳止め薬および去痰薬としていくつかの研究が行われた。
しかし、これまでに発表された研究では、一貫した有益性は認められていない。
研究の方法
湿性咳嗽など感冒症状を有する青年および成人を対象に、多施設で8日間の臨床試験がアメリカで行われた。
徐放性のグアイフェネシン(GGE)錠600mgを1日2回(2錠/回)1週間投与し、かぜ症状・喀痰の量などに対する有効性を調査した。
研究に参加した人は、感冒症状以外は健康で、参加前の感冒症状は5日以内であることが条件であった。
この条件を満たした378人が対象で、ランダム化で「GGE、n=188;プラセボ群190例」が割り付けられた。
最終的にGGEグループは151名、プラセボグループは144名プロトコルを完了した。
試験の1日目、3日目、4日目および8日目に各被験者から喀痰試料を採取し、喀痰のレオロジーと界面張力を測定した。
1日目と4日目に24時間の喀痰を採取し、全容量と水和について分析した。
研究の結果
GGE群とプラセボ群の両方の症状は、経時的に同程度に改善した。
また、
- 喀痰量
- 固形分率
- 界面張力
- 弾性
- 粘度
- 機械的インピーダンス
に関して, GGE群とプラセボ群との間にほとんど差はなかった。
結論
グアイフェネシン(GGE)は、急性呼吸器感染症において、喀痰の量や性状に測定可能な効果を示さなかった。
よって、急性呼吸器感染症の治療に用いても、去痰薬または粘液溶解薬として効果を発揮する可能性は低い。
(ClinicalTrials.gov registration NCT 01046136)
考察
いくつかの点について考察してみようと思います。
グアイフェネシンとは?
グアイフェネシン(別名, グリセリルグアイアコラートエーテル (GGE) )は、元はグアヤックの木に由来する薬のようですね。
グアイフェネシンは、19世紀から呼吸器疾患の治療に用いられてきた歴史があるようです。
また、FDAから市販用去痰薬として承認されており、「Mucinex」というブランドで発売され、米国における年間売上高は約1億3500万ドル(≒140億円)です。
今回の研究に関して
今回の研究に関しては12歳以上が対象のようなので、微妙に小児も含んでいそうですね。
弾性と粘稠性をみたのは、純粋に痰の質的な変化を見たかったようです。
一方で、痰の量や水分量を見たかったのは、去痰作用があればこれらが増加するという意図もあったようですね。
GGE | プラセボ | |
水分量 | ||
1回目 | 4.7g (0.471) |
6.083g (0.754) |
2回目 | 4.292 g (0.460) |
4.718 g (0.518) |
変化 | -0.981 (0.593) |
-2.081 (0.821) |
%固形物の変化 | 0.191% (0.223) |
0.042% (0.236) |
まとめ
今回は、アメリカの12歳以上の急性呼吸器感染症において、市販薬で使用されているグアイフェネシンの有効性を検討しています。
グアイフェネシンを使用しても、痰の粘稠度や弾性、1日の痰の量などに変化はみられなかったようです。
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