小児科

季節性鼻炎患者において、鼻毛(ビブラート)の密度は喘息発症リスクに影響するか?[トルコ編]

今回は、季節性鼻炎(SR)患者において、鼻毛の密度が喘息発症リスクに及ぼす影響を検討した研究になります。

とてもユニークな研究でしたので、ご紹介します。

マミー
マミー
鼻毛ってどのような役割があるのですか?

ユーキ先生
ユーキ先生
鼻の保湿や、空気をある程度フィルターする役割もあると言われています。

Dr.KID
Dr.KID
実際に論文を読んでみましょう

ポイント

  • 季節性鼻炎(SR)患者において、鼻毛の密度が喘息発症リスクに及ぼす影響を検討した研究
  • 鼻毛の量が多い方が喘息の有病率が少ない傾向にあり、その予防効果が示唆された。

 2011年にトルコから発表されたようです

季節性鼻炎患者において、鼻毛(ビブラート)の密度は喘息発症リスクに影響するか?[トルコ編]

研究の背景/目的

鼻に入ってきた大きな粒子は、前鼻部に存在する鼻毛によって集められます。鼻毛の密度が高いと鼻のフィルター効率が向上し、逆に鼻毛の量が少ないとフィルター効率が低下します。鼻毛の量には個人差があり、それによって鼻のフィルター機能にも違いが出てきます。

鼻のフィルター機能の低下は、気道のアレルゲンへの曝露の増加につながる。本研究の目的は、季節性鼻炎(SR)患者において、鼻毛の密度が喘息発症リスクに及ぼす影響を明らかにすることである。

研究の方法

233人の患者を対象に、標準的な質問票を記入し、身体診察とアレルギー検査を行った。患者は、鼻毛の量[少数(ほとんどない)、中程度、多数]に応じて3群に分けた。喘息と鼻毛量との関連性を評価した。

Dr.KID
Dr.KID
鼻毛の量で分けるとは、とてもユニーkな研究ですね。

研究の結果

75名(32.2%)に喘息が検出され、そのうち45名(60%)に花粉喘息も認められた。喘息の割合は、鼻毛の少ない群、中程度の群、多い群でそれぞれ44.7、26.2、16.7%であった(p = 0.002)。

鼻毛が少ないことは、喘息発症のリスクを統計学的有意に増加させた[オッズ比(95%信頼区間):少ない、参考;中程度、0.41(0.21-0.78);多い、0.19(0.06-0.55);p=0.002]。

結論

今回の結果から、鼻のろ過機能を提供する鼻毛の量は、SR患者の喘息発症リスクに対して保護効果があることが示唆された。我々の知る限り、このテーマに関する文献上の報告はこれが初めてである。

考察と感想

面白い着眼点の研究と思いました。

著者らも述べていますが、鼻毛の量と疾病の関連性を検討した研究は思いのほか少なく、意外な盲点かもしれません。

鼻毛がたくさんあったとしても、ウイルスや細菌といった病原体、塵や埃といった粒子は小さいので、基本的には鼻の中に入りうるものと考えています。

しかし、鼻毛によって流入する速度であったり、ある程度のフィルター効果があるため、疾病の予防に一役かっているのかもしれません。

Dr.KID
Dr.KID
感染症との関連性の研究とかもできそうですね。

とはいえ、この研究は横断研究であり、因果の検証は今後も質の高い研究で必要だと思います。例えば、ARのある患者の鼻毛の量を計測してその後追跡してみる、鼻毛カットのRCTなども考えられます。

まとめ

季節性鼻炎(SR)患者において、鼻毛の密度が喘息発症リスクに及ぼす影響を検討した研究になります。

鼻毛の量が多い方が喘息の有病率が少ない傾向にあり、その予防効果が示唆された。

 

鼻毛については、こちらのnoteでも詳しく書いています↓↓

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/12/30 02:40:55時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。