すごく素朴な疑問ですが、手洗いの感染予防効果は小児において、どのくらいあるのか、流水と石けん vs. 手指消毒どちらが優れているのか、気になったため調べてみました。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- クラスターRCTで手洗いの感染予防効果を検証
- アルコール手指消毒も、ハンドソープ+流水もかぜ予防に効果絵的
- アルコール手指消毒のほうが有効性は大きかった
乳幼児はアルコール手指消毒のほうが有効性は大きそうです。一方で、消毒液を介した事故が起こらないよう、大人がきちんと管理する必要があります。
研究の概要
目的
呼吸器感染症は、保育所に通う小児において重要な合併症であり、過剰な抗生物質処方の重要な原因です。
保育所および家庭で行われた教育的および手指衛生プログラムが、小児における呼吸器感染症の発生率と抗生物質の処方を減少において、どの程度の有効性を評価しています。
方法
アルメリア(スペイン)の24のデイケアセンターに通う0~3歳の小児911人を対象に、8ヵ月間追跡調査を行ったクラスターランダム化比較試験です。
デイケアセンターに子供が通う家庭を2つの介入グループに分けて、教育と手指衛生対策を実施しています:
- 石鹸と水(SWG;n = 274)
- 手指消毒剤(HSG;n = 339)
- 対照群(CG;n = 298):通常の手洗い手順の指導
呼吸器感染症の発生率は、ポアソン回帰モデルを用いて比較されています。欠席日数の割合は、ポアソン正確検定を用いて比較しています。
結果
5211件の呼吸器感染症が報告された。
HSG(手指消毒剤)の子どもたちはCG(対照群)の子どもたちと比較して、呼吸器感染症の発生率(発生率比[IRR]:0.77;95%信頼区間[CI]:0.68-0.88)および抗生物質の処方率(IRR:0.69;95%CI:0.57-0.84)は少なかったです。
SWG(石けんと水)の子どもたちはHSG(手指消毒剤)の子どもたちと比較して、RIエピソードのリスク(IRR:1.21;95%CI:1.06-1.39)および抗生物質の処方(IRR:1.31;95%CI:1.08-1.56)が高かったです。
IRR | HSG | SWG | CG |
呼吸器 感染 |
0.77 (0.68-0.88) |
1.21 (1.06-1.39) |
– |
抗生剤 処方 |
0.69 (0.57-0.84) |
1.31 (1.08-1.56) |
– |
呼吸器感染症による欠席は5186日で、欠席日数の割合はHSG(手指衛生)の方がCG(コントロール)およびSWG(石けんと水)に比べて低かったようです。
結論
デイケアセンターの職員、子ども、保護者を対象に、手指消毒剤に使用と、それの使い方を教育する手指衛生プログラムは、子どもたちの呼吸器感染症に対する欠席日数、さらに抗生剤の処方を減少させる効果があったようです。
感想と考察
乳幼児は手洗いの指導が難しい年齢なのが原因かもしれないですね。
手洗いしようにも、中途半端で終わってしまう可能性もあるので、手指消毒剤を使用したほうが効果的だったのかもしれません。
まとめ
乳幼児を対象に、手の清潔に、石けんと流水 vs. 手指消毒剤を比較した研究です。手指消毒剤のほうが、呼吸器感染症のリスクは減少し、その結果として抗生剤の処方率も低下していました。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/21 02:10:50時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について