今回は、アメリカから報告された、手指消毒剤のインフルエンザに対する予防効果を検証した研究をみていきましょう。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- アルコール手指消毒剤とインフルエンザ予防効果を検証
- 学校で手指衛生と咳エチケットを教えると、インフルエンザ感染率が減る傾向
アルコール手指消毒剤が感染症の予防効果にどのくらいあるか検証した研究はたくさんあります。
研究の概要
背景
学校でのインフルエンザの蔓延を減少させるため、アルコール手指消毒剤の有効性に関するエビデンスは不十分である。
方法
Pittsburgh Influenza Prevention Projectは、2007〜2008年のインフルエンザシーズンに、ペンシルベニア州ピッツバーグの10の小学校で、クラスター・ランダム化比較試験を実施した。
5つの介入した学校の子供は、手指衛生と咳エチケットなどのトレーニングを受け、手の消毒剤を定期的に使うように提供・奨励された。
残りの5つの学校はコントロールとした。
インフルエンザ様疾患の小児の検体を採取し、RT-PCRによりインフルエンザAおよびBの検査をした。
結果
合計3360名の小児が研究に参加した。
RT-PCRを用いて、インフルエンザAは54例、インフルエンザBは50例を検出した
アルコール手指消毒の症例は、インフルエンザの感染率を低下させる傾向にあったが、推定値は不正確であった(発生率比[IRR], 0.81;95%信頼区間:1.23〜0.54)。
介入効果は、インフルエンザAにおいて大きく、調整IRRは0.48であった(95% CI:0.87、0.26)。
結論
統計学的な有意差はないものの、アルコール手指消毒と咳エチケットは、インフルエンザの感染率を19%減少させた。インフルエンザAに関しては、52%減少させた。
咳エチケットや手指消毒は、小児におけるインフルエンザ感染症を減少させるための重要な補助手段となり得ることを示唆する。
感想と考察
毎年冬はインフルエンザが流行するので、学校での感染予防という点では、ワクチンだけではんく、こういった手指消毒や咳エチケットなどの指導は重要ですね。
「WHCK the flu(インフルエンザを打つ)」をメッセージに;
- Wash hand: 手を洗う
- Home: 具合が悪い時は家で過ごす
- Avoid touching eye, nose, mouth: 目・鼻・口を触らない
- Cover: 咳やくしゃみの時は、肘で覆う
- Keep: 具合の悪い人とは距離をとる
という指導をしているようです。
まとめ
学校で、アルコール手指消毒剤を使用した手指衛生や咳エチケットなどを教えると、インフルエンザ感染のリスクを下げることができるかもしれない結果でした。
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