今回は、スペインから報告された、手指消毒剤を用いた手洗いプログラムの有効性を検討した研究結果をみてみましょう。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- スペインで行われた研究
- 通常の手洗い+ハンドソープに、アルコール手指消毒剤を追加
- 胃腸炎による欠席率が低下した
アルコール手指消毒は、感染症の予防に有効という結果が複数あります。
研究の概要
背景
急性胃腸炎は子どもたちの間で最も一般的な病気の一つで、欠席の重要な原因の一つでもある。
本研究の目的は、急性胃腸炎による学校欠席の予防のために、手指消毒剤を用いた手洗いプログラムがどの程度有効かを評価した。
方法
アルメリア(スペイン)の5つの州立学校に通う4歳〜12歳までの子供1341人を対象としたオープンラベルのランダム化比較試験で、8ヶ月間の追跡調査を行った。
- 介入群(EG):石鹸と水で手を洗い、手指消毒剤を使用」
- 対照群(CG):通常の手洗い手順
に従った。
急性胃腸炎による欠席率を多変量ポアソン回帰分析により2群間で比較した。
両群の欠席日数の割合は、Z検定を用いて比較した。
結果
急性胃腸炎による学校欠席は、446例ありました。
介入群(EG)の学童は急性胃腸炎による欠席率が36%低く(IRR:0.64、95%信頼区間:0.52-0.78)、欠席は0.13エピソード/person-year減少した(EGの0.27 vs. CGの0.40エピソード/person-year)。
急性胃腸炎による欠席日数の割合は介入群(EG)で少なかった(EG:0.31%、95%信頼区間:0.28-0.35 vs. CG:0.44%、95%信頼区間:0.40-0.48)。
結論
石鹸による手洗い+手指消毒剤の使用は、急性胃腸炎による欠席日数と学校欠席者数を減らすための効率的な対策であるかもしれない。
感想と考察
石けんと流水だけより、アルコール手指消毒剤を併用したほうが感染症予防としての効果はよさそうでしたね。
流水と石けんで物理的な汚れを落とし希釈して、最後にアルコールでしっかり消毒といったところでしょうか。
ただ、アルコールも皮膚が荒れてしまったり、アレルギー体質の方もいると思うので、そういった配慮も重要かと思いました。
オープンラベルで、この状況だとspill over effectがあるかもしれないですね。
まとめ
スペインで行われた研究で、流水とハンドソープの手洗いにアルコール手指消毒剤を追加することで、胃腸炎のリスクおよびそれに伴う欠席日数を減らすことができました。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/30 02:40:54時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について