今回の研究は、成人・小児を対象に、抗菌薬入りのハンドソープと通常のハンドソープで、感染症のリスクがどの程度異なるかを評価しています。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 抗菌薬入りのハンドソープに意味があるか検討
- 感染症のリスクは使用しても、ほぼ変わらない
- なぜか慢性疾患のある患者は、感染のリスクが上昇
基本的に抗菌薬入りのハンドソープはあまりメリットがなく、現在は使用しない流れになっています。
研究の概要
背景:
抗菌成分を含む洗浄および衛生製品は、家庭において広く使用されている。
しかしながら、感染症の症状の発生に対する影響は、ほとんど研究されていない。
目的:
家庭における感染症症状の発生に対する消費者のための抗菌性洗浄および手洗い製品の効果を評価する。
方法:
クラスター・ランダム化二重盲検臨床試験。マンハッタン北部の都心部、ニューヨーク。
参加者は、少なくとも一人の就学前児童を含む主にヒスパニック系の238世帯(1178人)。
介入は、一般的な清掃、洗濯および手洗いに抗菌性または非抗菌性製品のいずれかを使用するように、各家庭に無作為に割り当てられた。
すべて市販製品であったが、パッケージは盲検化され、製品は参加者に無料で提供された。
アウトカムの計測は、衛生習慣および感染症症状をメインに、48週間にわたり毎週の電話で、家庭訪問は毎月、インタビューは4半期毎に行われた。
結果:
症状が生じる割合は以下の通りであった:
症状 | 割合 |
鼻水 | 26.2% (717/2736) |
せき | 23.3% (640/2737) |
喉の痛み | 10.2% (278/2737) |
発熱 | 11% (301/2737) |
嘔吐 | 2.2% (61/2737) |
下痢 | 2.5% (69/2737) |
結膜炎・皮膚感染 | 0.77% (61/2737) |
介入群とコントロール群の間の差は、各症状をみても、ほとんど認めなかった。
結論:
試験した抗菌製品は、本質的に健康なヒトを含む家庭でウイルス感染症の症状に対するリスクを低下しなかった。
感想と考察
抗菌成分が入っていると、なんとなく良さそうな印象もあるかもしれませんが、感染症予防という観点からはほとんどメリットがなさそうで、それなら普通のハンドソープや衛生用品で良いのではという結論ですね。
こういった製品を安易に使用すると、耐性菌の温床になるようで、気をつけたいところです。
まとめ
ハンドソープなど、衛生用品に抗菌成分が必要か検討した研究です。
抗菌成分の入った製品を使用しても、感染症の症状が予防できるわけではなさそうでした。
耐性菌の温床になりうると考えると、あまりメリットのない製品かもしれません。
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