今回の研究は、流水とハンドソープを用いた手洗いの指導が、保育所での胃腸炎の感染率を低下するか検討しています。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- クラスターRCTで手洗いの感染予防効果を検証
- 手洗い講習をすると、胃腸炎の感染率は半分程度に低下
- 2歳未満での効果は限定的だった
乳幼児はアルコール手指消毒のほうが有効性は大きそうです。一方で、消毒液を介した事故が起こらないよう、大人がきちんと管理する必要があります。
研究の概要
背景
下痢性感染症は、保育所に通う小児によくみられます。
保育所で感染症の伝播を予防できるか否かは、保育スタッフの行動も重要です。
この研究では、小感染管理手順の改善により、胃腸感染症の伝播が減少できるかどうかを検討した。
方法
著者らは、オーストラリアの1都市の保育所で行われたクラスター・ランダム化比較試験を実施し、感染管理介入の有効性を検証した。
介入は、感染の伝播と手洗いに関する保育スタッフの訓練です。
スタッフと子供の行動の両方に焦点を当てて、教育されています。
介入の実施を観察者が記録した。疾患は2週間ごとの電話インタビューで親の報告により測定しています。
結果
下痢エピソードは合計で、311ありました。
下痢の発症率は、
- 介入センター:1.9例/1人年
- コントロールセンター:2.7例/1人年
であった。
多変量解析をしたところ、下痢エピソードが介入センターの子供で50%低下することが示された。一方で、介入の影響は24か月齢以上の子供に限られた。
小児の手洗いの遵守率が高い施設では、下痢の発症が66%減少しました。
結論
この研究は、保育に従事する職員や小児に感染管理の教育をすることは、下痢の伝播を減少させる可能性があると示唆されています。
小児医療における下痢エピソードの減少は、生後24ヵ月以上の小児に限られていた。
感想と考察
今回は、2歳未満は手洗いの指導が難しい年齢なのか、あまりよい成績ではなかったです。手洗いしようにも、中途半端で終わってしまう可能性もあるので、手指消毒剤を使用したほうが効果的だったのかもしれません。
まとめ
乳幼児のいる保育所を対象に、石けんと流水の有効性を検討した研究です。
手洗いの指導を行った施設のほうが胃腸炎の発症率は低い傾向にありました。一方で、2歳未満での有効性は限定的なものだったようです。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/21 02:10:50時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について