今回の研究は、ミャンマーで行われた、手洗いの指導が、家庭での胃腸炎や感冒の感染率を低下するか検討しています。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- クラスターRCTで手洗いの感染予防効果を検証
- 手洗い指導と石鹸の提供の介入効果
- 小児の下痢の発生率は低下した
手洗いの指導や、石鹸やハンドソープを提供すると、乳幼児の下痢の発症率は低下すると報告した研究は多数あります。
研究の概要
背景
今回の研究は、ミャンマーのRangoonにある社会経済的地位の低い地域で行われました。
5歳未満の小児494人と母親による手洗いが、小児における下痢と赤痢の発生率を低下させるかどうかを検討しています。
方法
非盲検ランダム化比較研究が行われています。
介入グループの子供と母親は、
- 排便後
- 3食の準備
- 食べる前
に手を洗うよう求められました。それぞれの家庭に、石けん2個が支給された。
コントロールグループは、これまでの習慣に従うようにしています。
4ヶ月間監視して、2群における下痢と赤痢の発生率を比較しています。
結果
コントロールグループと比較して、手洗いグループ子供の下痢の発生率は低い傾向にありました(発生率比 0.70; 95%信頼区間 0.54~0.92)。
赤痢の発生率については、2歳未満の小児では40%の減少(発生率比 0.58; 95%CI 0.22-1.55)を認めたが、それ以上の小児では影響はなさそうだった(発生率比1.2; 95% CI 0.52-2.80)。
結論
本研究は、手洗いの指導と石鹸を提供すると、下痢と赤痢からの感染症リスクを低下させるかもしれない。
感想と考察
これまでは保育所での研究が多かったですが、家庭での手洗いの重要性もありますね。
一方で、赤痢などは高所得国では発生率が低いので、この結果を一般化は難しいかもしれないですね。
どうてもいい話ですが、この論文、1989年からミャンマーから出されたものですが、記載が非常に簡潔で、読みやすいものでした。
まとめ
乳幼児のいる家庭を対象に、石けんと流水の有効性を検討した研究です。
全体としては、手洗いの指導と石鹸の提供は、小児の下痢の発生率低下につながったようです。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について