今回は、カナダから報告された、手洗いの胃腸炎予防効果を検証した研究をみていきましょう。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 保育所に手洗いや清潔を指導する介入効果を検証したカナダの研究
- 上気道炎や下痢の発症率が30%ほど低下したようです。
手洗いが感染症の予防効果にどのくらいあるか検証した研究はたくさんあります。
研究の概要
本研究の目的は、デイケアセンターに通う幼児における呼吸器疾患および下痢性疾患の発生率を減少させる衛生プログラムの有効性を評価することであった。
方法
カナダのケベック州にある52の保育所で、1996年9月1日〜1997年11月30日にかけてランダム化比較試験が行われた。
何らかの理由による欠席と、幼児の風邪や下痢の毎日の発生が、教育者によってカレンダーに記録された。
予告なしの訪問で、子供の手と教育者の手の糞便大腸菌数を3回測定した。
結果
全体として、47の保育所において、1,729人の子供を合計153,643人日追跡した。
下痢の発生率は、介入によりかなり低下し(IRR=0.73;95% CI=0.54、0.97)、介入は上気道感染の発生率をも低下した(IRR=0.80;95% CI=0.68、0.93)。
結論
モニタリングだけでも、子どもや教育者の手の細菌汚染レベルを下げる重要な効果があった。結果は、介入プログラムとモニタリングのみの両方が、デイケアセンターに通う小児の感染を低下させる役割を果たすことを示す。
感想と考察
確かに保育所ですと、下痢を介した感染症も多く、おむつなどの取り扱いは重要ですよね。スタッフに手洗いや、どのような消毒をしたらよいか、そのタイミングなどを指導することで、胃腸炎のリスクが低下したようですね。
まとめ
今回は、カナダの保育所を対象に行われた研究です。手洗いや清潔に関する講習会を開いたグループのほうが、下痢の発症率が少ない傾向にありました。
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