科学的根拠のある子育て・育児

手洗いや清潔の指導は、小児の胃腸炎感染を予防するか?[コンゴ共和国編]

今回の研究は、コンゴ共和国(当時はザイール)で行われ、手洗い・排泄物の処理が、家庭での胃腸炎や感冒の感染率を低下するか検討しています。

先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。

ポイント

  •  コンゴで行われたクラスターRCT
  •  手洗いや排泄物の清潔指導が胃腸炎の発症予防する効果を検証
  •  胃腸炎の発生率が10%ほど低下した
マミー
マミー
手洗いはどのくらい意味ありますか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の文献をみてみましょう。

  手洗いの指導や、石鹸やハンドソープを提供すると、乳幼児の下痢の発症率は低下すると報告した研究は多数あります。

 研究の概要

背景:

ザイール農村部の幼児における病的状態の主な原因の1つが急性胃腸炎である。

バンドゥンドゥ州では急性胃腸炎の予防プログラムはほとんど実施されておらず、入手可能なデータによると年間有病率は10%である。
このため、ザイールにおける急性胃腸炎の発症率を減少させる方法は緊急で必要である。

さらに、胃腸炎を予防戦略としての衛生教育の潜在的な有効性と実現可能性の評価も同時に必要である。

本研究ではこのトピックに焦点を当てて実施された。

方法:

個人および家庭の衛生行動の改善を通じて下痢を減少させる教育的な介入効果を検討した。
クラスター・ランダム化比較試験で、ザイール農村部の地理的に離れた18の村落クラスター(サイト)で、この研究は実施された。

現地の調査員たちにより毎週家庭訪問が行われ、12週間にわたり3~35ヵ月の小児2082人を対象に、下痢の罹病率に関するベースライン情報が集積された。

300家族において、下痢に関連する衛生習慣の観察が体系的に行われた。

介入では、

  • 庭からの動物の糞便の廃棄
  • 排便後および食事準備と食事前の手洗い
  • 子供の糞便の廃棄

といったメッセージを言及しています。

介入の開始3か月後と1年後に、下痢罹患率調査の観察を実施した。

結果:

介入地域の小児は、コントロールと比較して、ピーク時の季節において、下痢のリスクが11%低下した。

最大の介入効果は24~35ヵ月の小児でみられ、介入地域の小児ではエピソードが少なく、下痢の日数が少なかった。

介入の質 (ボランティアの有効性と地域社会の参加のスコア化された尺度) が最も高い地域では、下痢が大幅に減少した。

結論:

ザイール農村部における本研究の結果は、衛生教育が、下痢エピソードの発生率と期間を減少させる効果的なアプローチである可能性を示唆する。

2歳の小児が最も効果があるようです。教育のホーソン効果(*ホーソン効果とは、治療を受ける者が信頼する治療者に期待されていると感じることで、行動の変化を起すなどして、結果的に病気が良くなる現象)が下痢の減少に寄与するかもしれない。

感想と考察

手洗い講習と無料で石鹸を提供することで、こども本人だけでなく、家庭内での感染症のリスクが減らせるという面白い結果でしたね。

小児がかぜや胃腸炎をもらってきて、家庭内で移しあってしまうのはよくあることだと思います。この場合、感染症をもちこむ可能性を減らす手洗いが有効だったのかもしれません。

あるいは、石鹸を無料で提供すること、子供が手洗いを頑張ることで、保護者やそのほかの家族もみんな手洗いをするようになって、全体として感染率がへったのかもしれないですね。

Dr.KID
Dr.KID
面白い結果でした。

まとめ

今回の研究は、インドで行われたクラスターランダム化比較試験でした。

手洗い講習と無料での石鹸の提供が、こども本人だけでなく、家庭内での感染症のリスクが減らせることが示唆されました。

 

Dr. KIDの書籍(医学書)

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/12/21 02:10:51時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。
RELATED POST