小児科

子どもの頭部打撲で注意すべきサインと受診の目安

 

  • 子どもが頭をぶつけてしまいました
  • どの程度なら受診したほうが良いですか?
  • 自宅で様子を見るなら、どのようなことに注意したら良いですか?

子どもは体の構造上、頭が大きいこともあり、ちょっとバランスを崩すと頭を打ってしまうことがあります。

よくある怪我だからこそ、知っておくと良い受診の目安や経過観察で注意すべき点を解説していきます。

本記事の内容

  • 頭部打撲した時に受診を検討した方が良いサイン
  • 自宅で経過観察する時の注意点

頭部打撲を含め外傷はみていない小児科もありますが、近年は頭部打撲を診る小児科外来も徐々に増えてきている印象です。今回は、外来で一般的にお話している内容をもとに解説していきます。

頭部打撲後に注意すべきサイン

頭部打撲後に受診した方が良いかは、いくつかの基準で考えると良いでしょう。具体的には、

  1. 意識状態が悪くないか
  2. けいれんをしていないか
  3. 嘔吐をしているか
  4. 手足を動かせるか
  5. たんこぶの大きさや、ぶつけた部分の凹み
  6. 落ちた高さ

などが指標になります。それぞれについて、詳しくみていきましょう。

1. 意識状態について

「意識状態」と言われてもちょっと分かりにくいかもしれません。
私たち医療者のいう意識状態が悪くないかの指標は、

  • 呼びかけに対して答えるか?
  • 刺激に対して目を開くか?
  • すぐに目を閉じず、意思疎通ができるか?

になります。このような項目に該当しない場合、意識状態は悪いと判断します。

逆に、意識状態に問題がない例として、

  • 目を普段通り開けて、視線があう
  • 声をかけ、話しかけに対して、普段通りの会話のやりとりができる
  • 泣いていても、あやしたり、抱っこしたりすると泣き止む

などが指標になります。
「意識状態が悪い」と判断したら、直ちに病院へ受診してください。

2. けいれんについて

こちらも意識に関連した項目ですが、意識が悪くなるのと同時に、けいれん(手足のひきつけ)を起こすことがあります。
これは、頭をぶつけることで、脳に衝撃を与えてしまうことがあり、結果としてけいれんすることがあります。

もし突然けいれんしてしまったら、医療機関でけいれんを止める必要があるため、すぐに救急車を呼び病院に向かいましょう。

3. 嘔吐について

軽傷の頭部打撲後にも嘔吐をしてしまうことはあり得ます。
このため、嘔吐のみでの受診基準は少し難しい印象にあります。
一般的な内容になりますが、少し時間をおいても複数回嘔吐をする、嘔吐が治らないとき、(吐かなくても)ずっと気持ち悪い時は、受診の目安になります。

4. 手足の動き

「怪我したのは頭なのに、なぜ手足の動きでしょうか?」と不思議に思った方もいるかもしれません。

頭の中にある脳からは、首を通して手足に神経が伸びています。
頭を打った後に、頭の中で出血が起きてしまったり、首や背骨を走っている神経(脊髄)が痛んだ場合、手足に麻痺が起こることがあります。
ですので、しっかりと手足を動かせるかは重要ですし、動かせない場合、動きが普段と比べておかしいと感じるようでしたら、受診しても良いでしょう。

5. たんこぶ や頭の凹み

「たんこぶができれば大丈夫」という迷信を外来でお聞きしたことがありますが、そんなことはありません。
特に乳幼児の大きなたんこぶ(3〜5cm以上)は注意が必要です。
大きなたんこぶは、それだけ頭に強い衝撃が加わった状態とも考えられますので、たんこぶ以外に症状がなくても、一度受診されて医師の目から見て大丈夫そうか確認してもらっても良いかもしれません。

たんこぶで分かりにくいこともありますが、ぶつけた場所が凹んでいる場合があります。
この場合、頭の骨(頭蓋骨)が骨折していることがあります。
もし、ぶつけた場所に不自然な凹むを感じたり、打撲後の頭の形を不自然に感じるようでしたら、お早めに受診しましょう。

6. 落ちた高さや受けた衝撃など

あくまでの目安ですが、

  • 2歳未満で90 cm以上
  • 2歳以上で150 cm以上

の高さからの頭部打撲は頭の中の出血のリスクが上昇すると一般的には言われており、注意が必要です。

ただし、これらも、どのように落ちて頭を打ったのか、落ちた先の地面の硬さ(コンクリートか、土の上か、絨毯の上か)でも異なります。
とはいえ、一定の目安になりますので、高い位置から落ちて頭を打ってしまった場合、受診されても良いと思います。

7. その他

その他、保護者から見て「何か様子が変」「いつもと違う気がする」など、不安を感じた時も病院を受診するようにしましょう。

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受診の際に医師がよく聞きくこと

頭部打撲を診療する際に医師がよく聞く項目として、

  • どのくらいの高さから落ちたか?
  • どのように頭をぶつけたか?(転んでぶつけた。頭から落ちてぶつけた)
  • どのような場所に頭をぶつけたか?(フローリング、土、カーペット、コンクリート)

などを気にして問診されることが多いです。
急に質問されると上手く答えられないこともあると思いますので、診察までの待ち時間にメモを用意しておいても良いでしょう。
あるいは、スマートフォンやデジカメなどで落ちた現場の写真を撮っていただけると、医療者と患者の間で共通意識が深まり、診療に非常に役立つと思います。

ご自宅で様子をみていて良い状態とは

頭部打撲をしても、全例で受診が必要なわけでなく、ご自宅で様子をみていて良いことがあります。例えば、

  • 意識がしっかりしていて、受け答えもスムーズ
  • 機嫌や痛みを含めて、普段と様子が変わらない
  • 高い位置からの転落ではない
  • 歩いたり、手足を動かしたり、日常生活に問題がなさそう

など心配する面がなければ、ご自宅で様子をみていても良いでしょう。

まとめ

今回は子どもの頭部外傷と、注意すべきサインや受診の目安について解説してきました。

簡単にまとめてしまうと、普段とあまり変わりなく、受け答えがしっかりできて、体を動かせる状態ならあまり心配はいらないと思います。

逆に、少し不安な症状があるときは、一度、医療機関で診察を受けても良いと思います。

あわせて読みたい

www.dr-kid.net

Reference

・CURRENT Diagnosis and Treatment Pediatrics, Twenty-Fourth Edition
・Nelson Textbook of Pediatrics, 2-Volume Set
・Nelson Essentials of Pediatrics, 8e
・Medical Note presents
・小児科学, 10e
・小児の薬の選び方・使い方
・HAPPY!こどものみかた
・子どもの風邪
・小児科診療ガイドライン
・今日の治療薬

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。