- 夏は高温多湿で熱中症が怖いです
- あらかじめ解熱薬を飲ませて良いでしょうか?
夏は高温多湿の環境で熱中症のリスクが上昇します。
特に小児は体温調整が未熟であるため、そのリスクが高いとされています。
解熱薬を予防的に飲ませることは、一般的には推奨されてはいませんが、実際の研究結果はどうなのでしょうか。
- 高温多湿下において解熱薬を予防的に投与することの是非を検討した論文
- 暑さによる体温上昇を緩和し、運動能力を向上させるかもしれない
- 本研究を根拠に熱中症予防への解熱薬投与は慎むべき
Mauger AR, Taylor L, Harding C, Wright B, Foster J, Castle PC. Acute acetaminophen (paracetamol) ingestion improves time to exhaustion during exercise in the heat. Exp Physiol. 2014 Jan;99(1):164-71. doi: 10.1113/expphysiol.2013.075275. Epub 2013 Sep 20. PMID: 24058189.
UKで2011年に報告された研究です。
アセトアミノフェンを飲むと高温多湿化での運動のパフォーマンスが改善する?[UK編]
研究の背景/目的
アセトアミノフェン(パラセタモール)は、一般に市販されている鎮痛・解熱剤であり、痛みを軽減することで運動能力を向上させることがこれまでに示されている。
本研究では、パラセタモールの解熱作用が、暑さによる体温上昇を緩和し、運動能力を向上させる可能性があるかどうかを検討した。
研究の方法
11名のレクリエーション活動中の参加者が、無作為化二重盲検法により、プラセボ薬またはアセトアミノフェン経口投与後、高温条件下(30℃、相対湿度50%)でサイクルエルゴメーターによる2回の疲労回復実験に参加しました。
研究の結果
アセトアミノフェン摂取後、参加者は有意に長い時間サイクリングを行い(アセトアミノフェン、23分±15 vs プラセボ、19分±13;P = 0.005;95% 信頼区間 = 90-379 s)、これに伴い、中核温度(-0.15℃)、皮膚温度(-0.47℃)および体温(0.19℃;P < 0.05)が低くなる傾向にあった。
アセトアミノフェン投与下では、参加者は熱感覚の評価も低くなった(-0.39;P = 0.015)と報告したが、心拍数に変化は見られなかった(P > 0.05)。
結論
本研究は、アセトアミノフェンの急性投与が高温条件下でのサイクリング能力を向上させること、そして、深部体温、皮膚温度、体温の低下および熱的快適性の主観的知覚が観察されたことに起因すると考えられることを実証した最初の研究である。
これらの知見は、アセトアミノフェンが運動から誘発される体温調節の負担を軽減し、疲労困憊までの時間を改善する可能性を示唆している。
考察と感想
2010年代に報告された、比較的最近の研究です。
解熱剤と言われるくらいですから、運動前に内服しておけば「熱産生が抑制」されそうですが、この研究ではそれなりに効果が認められていたようです。
ただ、この研究は後の研究から批判もあり、運動時間が短い点、熱産生率をコントロールしていない点が挙げられますです。
高温多湿での運動ですが、基本的には暑すぎる日の運動は避け、水分をこまめに摂取すること、暑さにはゆっくり順応させることが重要と思います。
解熱薬はメリットがないと現状では考えられていますから、熱中症予防を目的とした内服は避けたほうが良いでしょう。
まとめ
今回は、UKで行われた研究で、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)の使用が、暑さによる体温上昇を緩和し、運動能力を向上させる可能性があるかみています。
高温多湿下での運動前に解熱薬を飲むと、運動能力の向上や深部体温の上昇の抑制効果などが認められたようです。
ですが、熱中症などの予防目的に安易に解熱薬を内服するのは避けたほうが良いでしょう。
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