- 夏は高温多湿で熱中症が怖いです
- あらかじめ解熱薬を飲ませて良いでしょうか?
夏は高温多湿の環境で熱中症のリスクが上昇します。
特に小児は体温調整が未熟であるため、そのリスクが高いとされています。
解熱薬を予防的に飲ませることは、一般的には推奨されてはいませんが、実際の研究結果はどうなのでしょうか。
- 熱中症において解熱薬を予防的に投与することの是非を検討した論文
- 深部体温や発汗量などに対して効果はなかった
- 熱中症予防への解熱薬投与は慎むべき
Coombs GB, Cramer MN, Ravanelli NM, Morris NB, Jay O. Acute acetaminophen ingestion does not alter core temperature or sweating during exercise in hot-humid conditions. Scand J Med Sci Sports. 2015 Jun;25 Suppl 1:96-103. doi: 10.1111/sms.12336. PMID: 25943660.
カナダで2015年に行われた研究です。
アセトアミノフェンを飲むと熱産生が抑制される?[カナダ編]
研究の背景/目的
アセトアミノフェン(ACT)の急性摂取は、暑い環境下でのサイクリング中の熱負荷を軽減することが報告されているが、そのエビデンスは不明瞭である。
研究の方法
本研究では、活動的な9名の被験者に、総体重1kgあたり20mgのアセトアミノフェン(ACT)またはプラセボ(PLA)を、サイクリングの60分前にランダムに摂取させた。
34.5 ± 0.1℃, 52±1%の相対湿度の環境下で、55±6%VO2maxに相当する一定の代謝熱生産率(ACT:8.3 ± 0.3 W/kg、PLA:8.5 ± 0.5 W/kg)で60分間サイクリングさせた。
研究の結果
安静時直腸温(Tre; ACT: 36.70 ± 0.17 ℃; PLA: 36.80 ± 0.16 ℃, P = 0.24), 食道温(Tes; ACT: 36.54 ± 0.22℃; PLA: 36.61 ± 0.17℃, P = 0.50) および平均皮膚温(Tsk; ACT: 34.00 ± 0.14℃; PLA: 33.96 ± 0.20℃, P = 0.70) はACTおよびPLAで同等であった.
運動終了時のΔTre(ACT: 1.12 ± 0.15 ℃; PLA: 1.11 ± 0.21 ℃, P = 0.92),ΔTes(ACT: 0.90 ± 0.28℃; PLA: 0.88 ± 0.23℃, P = 0.84),ΔTsk(ACT: 0.80 ± 0.39℃; PLA: 0.70 ± 0.46℃)には差がほとんどなかった。
平均局所発汗量(ACT: 1.02 ± 0.15 mg/cm2/min; PLA: 1.02 ± 0.13 mg/cm2/min, P = 0.98) と全身発汗量(ACT: 663 ± 83 g; PLA: 663 ± 77 g, P = 0.995)に違いは認められなかった.
さらに、自覚的労作と熱感覚および熱的快適性の評価は、ACT条件とPLA条件とで差がなかった
結論
高温多湿条件下での中等度運動60分前のACT摂取は、生理的体温調節制御および自覚的緊張を変化させないことが明らかとなった。
考察と感想
2010年代に報告された、比較的最近の研究です。
解熱剤と言われるくらいですから、運動前に内服しておけば「熱産生が抑制」されそうですが、現実にはそうはならないようですね。
この研究の特徴は、以前に行われた研究より運動時間が長い点、熱産生率をコントロールした点にあったようです。
熱中症ですが、基本的には暑すぎる日の運動は避け、水分をこまめに摂取すること、暑さにはゆっくり順応させることが重要と思います。解熱薬はメリットがないですから、熱中症予防を目的とした内服は避けたほうが良いでしょう。
まとめ
今回は、カナダで行われた研究で、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)の使用が、発汗量や深部体温の上昇リスクを軽減するかみています。
残念ながら、高温多湿下での運動前に解熱薬を飲んでも、全く効果は認められませんでした。
熱中症などの予防目的に解熱薬を内服するのはメリットがなく、避けたほうが良いでしょう。
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