今回は高出力磁石の研究をご紹介します。
- 対象者の90%以上が警告ラベルの有無を知らないか、あっても読まなかった
- 約半数が強力磁石は子供のおもちゃだと信じていた
- 強力磁石磁石製品に警告ラベルを貼ることは、子どもの傷害を予防する可能性は低い
Middelberg LK, Leonard JC, Shi J, Aranda A, Brown JC, Cochran CL, Eastep K, Gonzalez R, Haasz M, Herskovitz S, Hoffmann JA, Koral A, Lamoshi A, Levitte S, Lo YHJ, Montminy T, Novak I, Ng K, Novotny NM, Parrado RH, Ruan W, Shapiro J, Sinclair EM, Stewart AM, Talathi S, Tavarez MM, Townsend P, Zaytsev J, Rudolph B. High-Powered Magnet Exposures in Children: A Multi-Center Cohort Study. Pediatrics. 2022 Mar 1;149(3):e2021054543. doi: 10.1542/peds.2021-054543. PMID: 35112127.
2022年にアメリカから公表されたようです。
小児における高出力磁石への曝露:多施設共同コホート研究[アメリカ編]
研究の背景/目的
強力磁石は,小児期の異物混入の中で最も危険なものの一つである.消費者団体や医師はこれらの製品を事実上禁止するよう求めているが、メーカーは警告ラベルがあれば十分にリスクを軽減できると主張している。
研究の方法
強力磁石への曝露(例:誤飲)を受けた小児の後方視的多施設研究であるInjuries, Morbidity, and Parental Attitudes Concerning Tiny High-powered Magnets(IMPACT of Magnets)の対象者に連絡をとった。
同意の得られた参加者は、警告ラベルの有無と有用性、磁石製品のメーカー、およびリスクに関する態度について、標準化されたアンケートに回答した。
研究の結果
対象患者596人のうち、173人の親と1人の成人患者に連絡し、参加に同意してもらった。 対象者は、60例(53.6%)で警告表示があるかどうかわからないと回答し、25例(22.3%)は警告表示がないと回答した。
28例(24.1%)で警告表示があったが、読んだと回答したのは13例(46.4%)のみであった。 家族が製造者を特定したのは28件(16.1%)で、そのうち25件は国産、27件は警告があった。
磁石が危険であることを知っていると回答したのは58%であったが、44.3%は子供のおもちゃであると考え、強力磁石が以前に米国市場から撤去されたことを知っていたのは6.9%のみであった。
結論
IMPACT調査の対象者の90%以上が警告ラベルの有無を知らないか、あっても読まなかったのに対し、約半数が強力磁石は子供のおもちゃだと信じていた。
したがって、強力磁石磁石製品に警告ラベルを貼ることは、子どもの傷害を予防する可能性は低いと考えられる。
考察と感想
この磁石は、2008年に Desk toy やストレス解消グッズとして販売されたようです。
直径5mm以下の小さな磁石が数百個入っており、一般的な磁石の何倍もの強度があります。それ以来、腸管の穿孔、瘻孔、膿瘍、鼓腸、さらには死亡を含む、子どもの数千の傷害に関連していたと報告されています。
このため、2012年にリコール・販売停止命令が下りた。
しかし、その後にメーカー側がメディアキャンペーンや訴訟などで対抗し、2016年に発売停止命令を撤回された歴史があるようです。
メーカー側は「警告ラベルが子供の怪我の予防に有効であり、磁石の全年齢市場撤去は必要ない」「警告ラベルを含む14歳以上を対象とするブランド製品による怪我の報告がない」といった指摘をしているようです。
ただし、警告ラベルをそもそも消費者(子どもやその保護者)に認知されているか、警告ラベルによって消費者の使い方が変わったか否か不明であったため、本研究が行われたようです。
階層化して表にすると分かりやすいかもしれないです。
回答者 | 173名 |
警告表示 | |
あるかどうか分からない | 60 (53.6%) |
警告表示がない | 25 (22.3%) |
警告表示あり | 28 (24.1%) |
読んだ 13 | |
読んでいない 15 |
まとめ
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