今回は、乗り物いに対して、抗ヒスタミン薬やプラセボと比較して、生姜(ショウガ)は有効かを検証したRCTの紹介です。
- 二重盲検無作為プラセボ試験において、生姜根(Zingiber officinale)の粉末の前庭系と眼球運動系に対する効果が検証
- 乗り物酔いの発生に決定的に重要な前庭系と眼球運動系は、いずれも生姜の影響を受けない
- 乗り物酔い症状の軽減は、胃腸系に対するショウガ根の影響に由来する可能性がより高いと考えられる
Holtmann S, Clarke AH, Scherer H, Höhn M. The anti-motion sickness mechanism of ginger. A comparative study with placebo and dimenhydrinate. Acta Otolaryngol. 1989 Sep-Oct;108(3-4):168-74. doi: 10.3109/00016488909125515. PMID: 2683568.
1989年にドイツから公表されたようです。
生姜の乗り物酔い効果のメカニズムは?:プラセボおよびジメンヒドリナートとの比較試験[ドイツ編]
研究の背景/目的
粉末ショウガ根(Zingiber officinale)に含まれる何らかの物質により、視運動刺激または前庭刺激に対する眼振反応が変化するかどうかを調べるために、二重盲検比較試験を実施した。
研究の方法
比較のため、被験者にショウガ根、プラセボ、ジメンヒドリネートを投与した後に検査を行った。
眼球運動は標準的なENG装置を用いて記録され、評価は自動眼振分析によって行われた。
研究の結果
ショウガ根の効果は、ベースラインまたはプラセボと差がないこと、すなわち実験的に誘発された眼振に影響を及ぼさないことが証明された。
一方、ジメンヒドリナートは、Carolic test、回転刺激、視運動刺激に対する眼振反応の減少を引き起こすことが明らかになった。
結論
本研究から、乗り物酔いの発生に決定的に重要な前庭系と眼球運動系は、いずれも生姜の影響を受けないという結論が得られた。
従って、従来の乗り物酔い防止剤に特徴的な中枢神経系の機序は、生姜根に関しては除外することができる。
乗り物酔い症状の軽減は、胃腸系に対するショウガ根の影響に由来する可能性がより高い。
考察と感想
実験的前庭刺激または視運動刺激時に、ショウガ根(rhiiomrc zingiheris)1000mgが脳神経の活動に何らかの影響を与えるかどうかを調べることを目的として行われた研究です。
対象に使用されたジメンヒドリナートは100mg、プラセボはラクトースだったようです。
対象になったのは、22歳から34歳(平均年齢26.3歳)の女性20名、男性18名の計38名のようです。
回転椅子使用後の眼振やcaloric test後の眼振を比較していますが、プラセボとショウガ根のグループはほとんど同じで、ジメンヒドリナートのみ反応がよかったようです。
神経系への影響がない→おそらく消化器系に作用しているのでは?、というロジックなのでしょうか。
まとめ
二重盲検無作為プラセボ試験において、生姜根(Zingiber officinale)の粉末の前庭系と眼球運動系に対する効果が検証されました。
乗り物酔いの発生に決定的に重要な前庭系と眼球運動系は、いずれも生姜の影響を受けないとようでした。
このことから、乗り物酔い症状の軽減は、胃腸系に対するショウガ根の影響に由来する可能性がより高いと考えられているようです。