家庭でもできるこどもの傷の対処法を知りたい方へ
- こどもが転んで擦り傷ができたけれど、どう対処してよいかわからない。
- あと、どの程度の傷であれば受診したほうがといか、ついでに知りたいと考えていませんか?
小児は転んだり、ぶつかったりして、よく擦り傷ができるとおもいます。
そこで、本記事では下記の内容を解説します。
本記事の内容
- こどもの傷のホームケア
- 受診の目安
傷口の処置はひと昔前と対処法が変わってきています。
傷を早く綺麗に治す方法と、なにか問題があった時に医療機関への受診の目安を知っておくと良いでしょう。
こどもの傷の対処法のポイント
まずは最初にポイントから説明していきましょう。
- 傷の最初の対応は洗浄と止血が基本
- 治療の基本は乾燥させない・感染させない
- 傷跡を目立たせないように紫外線対策
- 「自分で対処できない」と思ったら医療機関へ受診を
の4点になります。ここからは、それぞれを詳しく説明していきます。
傷の初期対応は洗浄と止血
転んだり、ぶつかった時に傷ができることがありますが、最初の処置で大事なのは
- 患部を清潔に洗い、汚れ・雑菌などを落とす
- しっかりと圧迫止血する
の2点につきます。
傷口を洗う
洗う際は水道水などの流水で大丈夫ですし、これで傷口表面の汚れがだいぶ落ちます。
砂や土などがついているときは、ガーゼなどを使用しながら、傷口からやさしく撫でるように取り除いてあげましょう。
あまり強くこすってしまうと、傷口がさらに傷んでしまったり、止血した場所から再出血してしまうことがあるので、できるだけ優しく洗うように気を付けましょう。
消毒液について
ひと昔前までは、傷口にしみたり、痛みを我慢しながら消毒液で傷口を清潔にしていました。
近年は、少し考え方が変わり、流水による洗浄がしっかりできていれば、基本的には消毒液は必要ないと考える人も増えてきています。
これにも理由があり、消毒液を皮膚に使用することで皮膚や傷口が傷んでしまい、かえって傷口の治りが遅れてしまう可能性があるからです。
もちろん全てのケースで消毒液が不要なわけでなく、必要なケースもあります。
重度の傷であったり、汚染が強い、手術室での処置が必要なときなどは消毒液を使用したほうがよい場合もあります。
止血について
水道水などで傷口を洗浄し、出血しているようなら、ガーゼやタオルなどで傷口をおさえて圧迫止血しましょう。
流水で洗いながら、どこから出血しているのか確認しておいて、出血している場所を中心に圧迫止血しましょう
湿潤環境を保つ
ひと昔前までは傷口を乾燥させていた時期もありますが、乾燥するとかえって傷の治りが遅くなるのがわかり、現在は湿潤環境を保つようにしています。
ここ最近は、傷口の自然治癒力を妨げないためにも、「湿潤環境が大事」と言われるようになってきました。
どうやらカピカピに乾燥させるより、保湿・保護された状態の方が皮膚の回復は早く綺麗に治るようです。
ワセリンなどを使って皮膚を保護をしても良いですし、湿潤環境を保てる絆創膏(キズパワーパッド)を使用しても良いでしょう。
絆創膏を取り替える頻度
理想的には
- 1〜2日に1回は絆創膏をはがし
- 傷口が感染していないか確認し
- 流水で患部を流して絆創膏を貼りなおす
を繰り返すと良いでしょう。というのも、傷口には一定の確率で皮膚の感染症を起こしてしまうことがあるからです。
傷口が感染しているサインとしては、傷口に赤みがある、触ると熱い、腫れている、悪臭のする膿が出てくる、などが典型的です。
「感染かもしれない」とご心配でしたら、我慢せずに病院に受診しましょう。
傷の自然経過について
病院でも一通りの処置が終わると「どのくらいで治りますか?」とよく聞かれます。およその目安ですが、
- 軽い擦り傷であれば5〜10日くらい
- 深めの傷であれば10〜15日くらい
でしょう。
傷が治って上皮化してくると、徐々に乾燥してきてピンク色の皮膚になってきますし、外から触れても痛みが軽減したり、水に触れてもしみなくなってきます。
痛みを減らすために
傷の痛みも様々な要因で起こりますが、
- 外的な刺激による痛み
- 腫れによる痛み
などが代表的です。
傷口と空気や水との接触、触れられるなど外からの刺激であれば、ワセリン+絆創膏やキズパワーパッドなどで湿潤環境を保ち、外の刺激から保護することで痛みはある程度和らぎます。
腫れていることで痛みを訴えることもあります。
この時は冷やしたり、痛み止めを使用してあげると良いでしょう。
長くても数日以内に痛みが治まることが多いでが、傷口に感染を起こしてしまっているケースもありますので、あまり無理せず再受診されて良いでしょう。
傷跡対策としての紫外線対策
傷口ができると、回復する過程で皮膚が新しくできます。
ですが、この状態は紫外線による刺激に弱く、色素沈着しやすいです。
具体的な対処法として、紫外線を避けるために直射日光が当たらないようにすると良いでしょう。例えば、傷が治って絆創膏やガーゼなどが取れたら、
- 日焼け止めを塗る
- 衣類や帽子などで遮光する
- (紫外線を通さない)テープを貼る
などがあります。
どのくらい紫外線対策をしたらよいかの基準はあまり定かではありませんが、多くの場合、短くても2〜3ヶ月以上が推奨されています(傷を受けた場所にもよると思います)。
受診の目安について
受診の目安についてですが、まず「自分では対処できない」と思うような傷なら、医療機関を受診してよいと考えます。
そのほか、
- こどもが呼びかけに対して反応が鈍い
- 出血が止まらない
- 痛くて動けない、歩けない
などの場合も受診の適応は十分にあります。
反応が鈍いなど、意識レベルが低いときは、脳の損傷を疑うことがあります。
また、痛くて動けない、歩けないような状態は、骨折など骨や筋肉に関わる疾患を疑います。
後者の場合、受診先は皮膚科や救急科(救急外来)、形成外科、整形外科などが選択肢になります。
小児科の場合、外傷を診てくれるところと、診ないところもありますので、受診前にお電話などで確認したほうが良いでしょう。
まとめ
今回は小児の傷について解説してきました。長々と書いてきましたが、ポイントはわずかでして、
- 傷の対応は洗浄と圧迫止血が基本
- 消毒は不要なことが多い
- 皮膚は乾燥させず、むしろ湿潤環境にする
- 傷が治ったら、紫外線対策をする
- 「傷口をどうしたら良いか分からない」と思ったら医療機関へ受診
の5点です。
外傷も急に起こりますので、事前に知識を蓄えておくと良いでしょう。
もちろん、完璧に覚える必要はなくて、こんなこと書いてあったな、と頭の片隅に残っていただければ幸いです。
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