はちみつがこどもの咳に有効である可能性を示唆した研究を複数ご紹介してきました。
簡単に結果をまとめると、以下の通りになります。
簡単にまとめると、1日だけの研究がほとんどですが、はちみつ(2.5-10ml)を飲むと、その晩の咳が軽減して、よく眠れたという結果でした。
はちみつにも様々な種類があるようで、過去の研究ではユーカリ、シトラス(柑橘系)、ソバ科、イラン産(詳細不明)で咳止めとしての有効性が報告されています。
さらに、咳止め(コデインやデキストロメトルファン(メジコン®))や鼻水止め(第一世代の抗ヒスタミン薬)と比較しても、はちみつの方が咳止めの効果は強かったです。
このように、既にはちみつの有効性は複数の研究で報告されています。
ここまでくると、次の研究の仮説として、「はちみつに何かを足したら、さらに咳止めとしての有効性を高められないか?」と考える研究者もいるでしょう。
今回は、はちみつにブロメライン(Bromelin®︎)を追加したら、咳止め効果がより強くならないかを検討しています。
(アイキャッチ画像のBromelinは、米国のアマゾンより拝借)。
ブロメライン(Bromelin®︎)について
今回の研究ははちみつにブロメライン(Bromelin®︎)を追加して研究していますが、あまり聞きなれない名前です。
まずはブロメライン(Bromelin®︎)を解説していきます。
ブロメライン(Bromelin®︎)は、パイナップル(A. comosus)から抽出されるタンパク分解酵素の一種のようです。
このブロメライン(Bromelin®︎)には、抗炎症作用や免疫調整作用があると言われているようです。
私自身はこのブロメライン(Bromelin®︎)は初耳なので詳しく知らないのですが、炎症性腸疾患や多発性硬化症、小児ですと副鼻腔炎で使用された経験があり、症状改善の効果があるかもしれないと言われているようです(これらの原著論文は未読です。悪しからず)。
はちみつが咳止めとして有効である可能性がいくつかの研究から示唆されています。
1−2歳以上であれば、基本的に安全に使えるのがはちみつの最大の利点ではありますが、ブロメライン(Bromelin®︎)も同じく非常に安全と考えられています。
このため、コデイン、デキストロメトルファン、抗ヒスタミン薬など、有効性の不確かなで、なおかつ重篤な副作用が懸念される薬を使うより、安全性の高く確実な治療を選択する方が賢明と言えます。
もし、ブロメライン(Bromelin®︎)をはちみつに加えることで、小児の咳の改善に有効であれば、風邪の咳で苦しんでいる小児やその保護者にとっては安全で有益な治療となりえます。
そこで、今回の研究はブロメライン(Bromelin®︎)とはちみつを使用して検討されています。
研究の方法
今回の研究はブラジルで行われたランダム化比較試験で、
- はちみつ+ブロメライン(Bromelin®︎)
- はちみつのみ
の2グループを比較検討しています。
投与されたはちみつの量は20kgまでは5ml、20kg以上は5 kg毎に1mlを追加しています。
対象患者は、
- 2-15歳
- 咳が少なくとも24時間以上続いている
- 慢性疾患がない
患者を対象にしています。
咳の評価について
咳の重症度の評価は0点(全くなし)から4点(非常にひどい)で行われています。
これまでのはちみつの研究と異なり、
- まず咳の重症度を10分評価する
- はちみつ ± ブロメライン(Bromelin®︎)を投与する
- 30分後に咳の重症度を再度評価する
という研究デザインになっています。
研究結果
Bromelinに31人、プラセボ(はちみつのみ)に29人が投与されました。
年齢、性別、症状の日数、咳の頻度や重症度など患者背景は2つのグループで均一でした。
メインの結果
Bromelin またはハチミツ投与前後での咳の重症度の変化を比較した結果がこちらです。
はちみつ +ブロメライン (n = 31) |
はちみつのみ (n = 29) |
P-value | |
咳のスコア (投与前後での減少) |
1.71 | 1.76 | 0.83 |
(論文Table 2より一部を抜粋)
咳の重症度の減少は、両グループでは統計学的には有意差はありませんでした。
つまり、はちみつにブロメライン(Bromelin®︎)を足しても、咳止めとしての追加での効果はなさそうでした。
私の考察
今回の研究ははちみつにブロメライン(Bromelin®︎)を足して咳がより改善するかをみています。
そもそもブロメライン(Bromelin®︎)が何か知らなかったので、非常に興味深い研究でした。
ブラジルにおいて、このブロメライン(Bromelin®︎)がどのような立ち位置にいるのかを含め、詳細を知りたいと思いました。
これまでの研究は一晩様子をみて咳を再評価をしていましたが、今回は投与30分後に咳の重症度を評価しています。
このため、これまでの研究と趣がやや異なる印象です。
なぜなら、どちらかというと即効性を見ているからです。
まず、はちみつについて、本当にそこまで即効性があるのか、少し懐疑的になっています。
両グループともはちみつは少なくとも投与されているわけですが、例えば水などプラセボを飲ませても同じ効果であった可能性もあります。
喉を潤すだけで咳が軽減する、といった経験をされた方もいると思います。
つまり、真のプラセボなしに、この研究の咳のスコアの軽快が、はちみつによるかは判断が難しいでしょう。
ブロメライン(Bromelin®︎)は確かにこの短時間では有効性は確認できませんでした。
しかし、1晩という経過でアウトカムを計測していないので、夜の咳に有効性があるかどうかは、今回の研究でははっきりしません。
まとめ
30分という短時間ですが、ブロメライン(Bromelin®︎)をはちみつに加えても、咳を追加で改善する効果は認めませんでした。
もう少し長期的な効果(例えば一晩以上)に関しては、この研究でははっきりとは言えず、続報が発表されることを期待して待とうと思います。
しかし、他国にはブロメライン(Bromelin®︎)のように、まだまだ私の知らない治療があることを知ることができた研究でした。