蜂蜜(はちみつ)は、かぜ症状(急性上気道感染症の症状)に有効と近年知られてきました。
Cochraneの系統的レビューが発表されていますが、この結果によると、ハチミツは小児の「咳」を改善することが示されています。
この研究の欠点としては、一晩限定の効果をみたものが、ほとんどです。
現実問題として、咳は一晩では改善しないことがほとんどなので、はちみつの効果が継続的にあるかは気になるところです。
また、はちみつはクセが強いので、嫌がってしまうお子さんもいます。
このため、牛乳と混ぜてみたらどうか?、というのは素朴な疑問として起こります。
今回の研究は、その双方を補ったものといえます。
- はちみつ+ミルクのレシピが、小児の急性咳嗽に有効かを検討
- 少なくとも鎮咳薬と同等の効果はありそう
1歳未満の小児は、乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、はちみつは投与しないでください。
また、牛乳も1歳未満のお子さんが大量に飲むと、消化不良や鉄欠乏性貧血を起こすことがあるので、調理のみに留めましょう。
子供の風邪による咳に、はちみつ+牛乳のレシピは有効なのか?
研究の背景
オーストラリアのガイドラインでは、非特異的な小児の急性の咳に蜂蜜が推奨されています。
現在利用可能なランダム化臨床試験では、蜂蜜の単回投与の効果が一晩限りで評価されてきましたが、複数回投与の結果は研究されていません。
研究の方法
非特異的な小児の急性の咳に対して、蜂蜜の効果を検討しています。
コントロールとして、イタリアで最も処方されている市販薬であるデキストメトルファン (DM) とレボドロプロピジン (LDP) を用いています。
有効性は両親が回答した咳に関するアンケートにより評価した。
主要エンドポイントの有効性は治療の成功であった。「ベースライン値と比較して治療後に50%を超える咳スコアの減少」を治療の成功として定義した。
研究の結果
非特異的な急性咳のある134人の子供を,
- 牛乳(90 cc)と蜂蜜(10 cc)の混合物
- デキストメトルファン (DM) or レボドロプロピジン (LDP)
をその後の3晩受けるようにランダム化した。
3人の子供は, 両親が質問票を完了しなかったため, 研究から除外した。
治療成功率は蜂蜜+牛乳群で80%, 鎮咳薬群で87%であった。
結論
牛乳と蜂蜜の混合物は, 小児の非特異的な急性咳において鎮咳薬(DMまたはLDP)と少なくとも同等の効果があるようである。
これらの結果は,プラセボ効果を完全に排除できないとしても,小児の咳に対する蜂蜜の効果を報告した以前の研究と矛盾しない。
考察と感想
はちみつの有効性を評価した研究で、前回のコクランとかねがね同じような結果ですね。
デキストロメトルファン(メジコン®️)には嘔吐などの副作用があるため、5歳未満の小児では推奨されていないのが現状です。また、チペピジン(アスベリン®️)も小児の咳には有効性は認めていません。
今回の点は、以下の2点に新規性があると思いました:
- 3日間評価している
- ミルク+蜂蜜にしている
これまでの研究は1日限りが多かったのと、蜂蜜単独で飲ませていました。蜂蜜はクセが強いものもあり、嫌がってしまうお子さんもいます。ミルクに混ぜて飲ませると、少し飲みやすくなるかもしれませんね。
まとめ
今回は、はちみつ+ミルクが風邪症状の改善に有効かを評価した研究です。
3日間評価して、少なくとも、小児で処方される鎮咳薬と同等の効果がありそうでした。
1歳未満のお子さんへのはちみつはNGです:
牛乳も、1歳になるまでは、主な飲料にするのは避けましょう。調理に入れるくらいならOKです:
小児で使用される咳止めのエビデンスをまとめたnoteもあります。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
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小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
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日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
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