子どもが頭を打ってしまった後、ご自宅でどのように過ごしたらよいかを知りたい方へ
- 子どもが頭を打ってしまったけれども、手当ての仕方がわからない
- ついでに、ホームケアのポイントを教えて欲しい
小児は転倒や転落時によく頭をぶつけてしまい、頭部打撲後に受診される患者さんは常に一定数います。
そこで、本記事では下記の内容を解説します。
本記事の内容
- 子どもが頭を打った後に行うべき手当
- 頭部打撲後のホームケアについて
- 頭部打撲に関して、よくある質問にお答えします
の3つにお答えしていこうと思います。
小児科外来でも頭部打撲後の患者さんはよく診ています。
小児科や小児救急において、よく言われている一般的な内容を中心に説明していければと思います。
(一部、外傷は全く診ていない小児科があるのも事実ですので、受診前には病院・クリニックに電話などでご相談されても良いと思います。)
こどもの頭部打撲後に行うべき手当について
こどもが走っていて転倒したり、公園の遊具から転落をしてしまうと、保護者としては大変びっくりしてしまうと思います。
まずは焦らずに、以下に3点に注意すると良いでしょう。
- 意識がはっきりしているか
- 首を痛がっていないか
- 出血していないか
それぞれについて、詳しく説明していきましょう。
1. 意識について
意識は、保護者が呼びかけたり、刺激を与えてみて、子どもがどう受け答えするかで判断します。
名前を呼んでみたり、皮膚を叩いたりして刺激を与えてみても、子供が受け答えてくれない場合は医学的には「意識がない」と判断します。
あるいは、受け答えを一時的にしてくれても、すぐに眠ってしまう場合や、受け答えがいつもと明らかに異なる場合は「意識レベルが低下している(意識が悪い)」と判断します。
このように、意識がはっきりしない場合、脳に重大な問題がある可能性があるため、速やかに病院に受診してください。
このようなケースは早急な評価と治療が必要になることがあるため、救急車を呼んでもよいと思います。
2. 首を痛がっている
頭部外傷といえば、意識レベルなど脳の問題が中心になりますが、首を痛がっている時も注意が必要です。
なぜなら、頭を打った衝撃が首にまで伝わり、首の骨(頚椎)や首の神経(頸髄)が傷んでしまっている場合があるからです。
脳からは首を介して手足に神経が走っています。このため、首を損傷すると手足の麻痺を起こしたり、しびれや痛みを訴えることがあります。
首を痛がっている時の応急処置ですが、まず大事なことは、むやみに動かさないほうが良いでしょう。
なぜなら、首を固定せずに動かしてしまうと、神経の損傷が悪化する可能性があるからです。
まずは仰向けに寝かせて、出来るだけ頭や首をあまり動かさないようにしましょう。
首をしっかり固定して安全に速やかに病院へ受診する必要があるため、救急隊を呼んでも良いと思います。
3. 頭からの出血について
頭から出血してしまった場合、ガーゼや清潔なタオルなどで出血している箇所を圧迫しましょう。
病院に受診するか否かは、傷の状態にもよります。
例えば、非常に浅い傷で、すぐに止血できてしまうような擦り傷であれば、様子をみていても良いでしょう。
一方で、出血が止まらない、傷口がぱっくり割れてしまっている、どうして良いか分からない、などのケースは受診されたほうがよいと思います。
このような場合は、病院で止血したり、傷口を縫うなど、医学的な処置が必要となることがあります。
また、頭部外傷の原因によっては、画像検査が必要となることもあります。
こちらで画像検査の大まかな適応を解説しています。
頭部打撲後のホームケアについて
家庭でできる看病のことをホームケアと言ったりしますが、頭部打撲後では、
- 外傷後の注意すべきサイン
- 痛みやたんこぶの対処方法
- 入浴や運動に関して
の3点を知っておくと良いでしょう。
1. 頭部外傷後の注意すべきサイン
「頭を打った後、どのくらい気をつけていたらよいですか?」
と聞かれることがあります。目安としては、頭部打撲から24時間くらいは気にかけてあげると良いでしょう。
頭部打撲から4〜6時間以内は特に症状がでやすいからです。
小児は打撲後の症状は成人と比較しても早く出てくるので、1日以上過ぎてなにか重大な問題があって症状が遅れて出るケースは減ります。
注意すべき症状として、
- 意識がない、意識が悪い
- 普段と何か様子が異なる(機嫌が非常に悪い)
- 頭痛がひどい
- 様子をみていても、何回も嘔吐をする
- 手足の動きがわるい、しびれる、感覚が変、首が痛い
- 急に物が見えづらくなった
などがあります。これらの症状がある場合、病院への受診をためらう必要はないでしょう。
2. 痛みやたんこぶの対処
頭をぶつけた場所や、たんこぶを痛がることがあります。
(小さなお子さんですと、嫌がってしまうケースも多いですが)嫌がらない範囲で冷やしてあげると良いでしょう。
擦り傷は水道水などでしっかりと洗って、ワセリンなどで保護してあげると良いでしょう。
清潔と保湿を心がけることで、傷が早く綺麗に治ります。
皮膚がぱっくりと割れてしまった場合は、縫合など医師の処置を受けた方が綺麗に治る傾向にあるため、受診されたほうが良いでしょう。
3. 運動や入浴について
軽い打撲であれば入浴はされても問題ないと考えています。
一方で、脳震盪の症状(意識障害、一時的な記憶がない、めまい、頭痛、嘔吐)がある場合は避けた方がよいかもしれません(明確なエビデンスはありませんが…)。
運動に関しても同様で、軽傷の頭部外傷で脳震盪の症状がなければ24時間ほど安静したら普段通り行なってよいでしょう。
一方で、脳震盪の症状がある場合は、ぶつけた直後はなるべく安静にして、1週間ほどはこどもの様子をみながら、徐々に運動の強度をあげていきましょう。
脳震盪の直後に頭を再度ぶつけると、脳に重大なダメージが残ることがあります(このことをセカンド・インパクト・シンドロームといいます)。
頭を打った後、画像検査は必要ですか?
外来でよくある質問で「画像検査は必要ないですか?心配なので画像検査してくれませんか?」と言われることがあります。
頭を打った後の画像評価は、レントゲンではなく、CTが必要になります。
CTにもメリットとデメリットがあり、
- メリット:重大な出血や骨折の見逃しが少ない
- デメリット:放射線への被曝、鎮静薬(眠る薬)が必要
があります。
CTを撮影するかどうかは、お子さんの頭部打撲の重症度にもよります。
軽症と判断された場合は、基本的にCTは必要ないと判断します。
特に被曝へのデメリットを考慮すると、全例を撮影するわけにはいかないため、軽症のお子さんにはルーチンで撮影していない施設がほとんどと思います。
まとめ
今回は頭部打撲後の応急処置・ホームケアについて、知っておくと役立ちそうな内容や、よくある質問をもとに記載してきました。
こどもは転んだ拍子に頭をよくぶつけてしまうので、頭部打撲後のケアを一通り把握しておくと良いでしょう。
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