- ワクチン接種後に赤く腫れ上がったり、熱が出るのが怖いです
- あらかじめ解熱薬を使用すると改善しますか?
ワクチン接種後には、痛みが生じたり、熱が出ることがあるため、解熱薬の使用を希望される方もいると思います。
また、あらかじめこういった副反応が起こらないよう「予防的に解熱・鎮痛薬を」と考える方もいるようですが、実際のところ予防効果は本当にあるのでしょうか。
アセトアミノフェンを使用した研究は複数ありますが、イブプロフェンンを使用したものもあるようです。
今回は、0歳の小児において、イブプロフェンがワクチン接種後の局所反応の予防に有効かを検討した研究をご紹介します。
- ワクチン接種後の局所反応に対して、解熱薬を予防的に投与することの是非を検討した論文
- 接種前後に使用すると、乳幼児の四種混合ワクチン接種においては発熱や局所反応の予防効果はあるかもしれない
- 抗体の獲得率は議論されておらず、不十分な検討
Current Therapeutic Research Volume 59, Issue 8, August 1998, Pages 579-588
ワクチン接種直後の解熱薬使用は、抗体獲得に悪影響をもたらす可能性があります。このため、特別な事情がない限り、避けた方が良いと私が考えています。
イブプロフェンは、乳児のワクチン接種後の発熱や局所反応を予防するか?
研究の背景/目的
本研究の目的は, ジフテリア・破傷風・百日咳 (DTP) と経口ポリオワクチン接種をする3, 5, 7か月齢の乳児において、イブプロフェンが副作用の低減に対して有効性はあるかを検討した。
研究の方法
この12ヵ月間の多施設非盲検ランダム化試験は、六つのプライマリケア施設で実施された。
DTPワクチンを受けている3か月(±15日)の合計256人の健康な子供を, 5と7か月齢(すなわち、第2および第3のDPT用量で)で検討した。
719回のワクチン接種の有害作用が検討され、219例の乳児にこれらの用量を投与した。
患者は、副作用が発現した際にイブプロフェンの予防投与(20 mg/kg/日を24時間かけて三回に均等に分割し、初回接種時にワクチン)または治療(イブプロフェン7.5 mg/kg)を受ける群にランダム化された。2回目と3回目のDTP投与後に同じ治療計画を行った。
予防接種後の有害作用は,以前に検証された質問票で親または保護者により記録され,直腸温上昇,全身反応(啼泣、眠気、むずかり、嘔吐、下痢、食欲不振),および局所反応(発赤、浮腫、硬結、疼痛)が含まれた。
研究の結果
この研究の結果から、イブプロフェンの予防投与を受けた小児は、DTPワクチン接種後に、反応が起こったときに治療を受けた小児と同様に体温が上昇したが、全身および局所への影響は少なかったことが示唆される。
発作,虚脱またはショック様状態(低緊張性低反応エピソード)のような著しい副作用は生じなかった。
予防群では注射部位に1個の無菌性膿瘍が見られた。
結論
このように,生後3, 5,および7カ月時のDTPワクチン接種後のイブプロフェン予防は,全身および局所の副作用の発生をわずかに減少させたが,体温を低下させる効果はほとんどなかった。
考察と感想
1990年代にスペインで行われた研究のようですね。これ以前の報告によると、この時期はアメリカやスペインでも、DPTワクチンの接種時に解熱剤の使用を推奨する意思が20-30%ほどいたという記録もあるようです。
今回のランダム化に関しては、
- イブプロフェンを24時間(8時間おきに使用)
- 発熱時のみに使用
としたようで、盲検化はされていなかったようです。
256人が研究対象となり、最終的に治療グループは110人、コントロールグループは109人だったようです。
治療 | コントロール | |
発熱 > 38 | 45.2% | 45.4% |
発赤 | 42.1% | 43.0% |
腫れ | 24.7% | 28.9% |
啼泣 | 20.5% | 25.5% |
傾眠 | 30.1% | 36.9% |
怯え | 26.7% | 32.8% |
嘔吐 | 5.9% | 6.1% |
下痢 | 3.4% | 3.3% |
食欲低下 | 30.1% | 28.4% |
発熱の予防という意味では、予防的にイブプロフェンを飲ませるメリットはあまりなさそうに感じてしまいました。
そのほかの副反応(啼泣や傾眠)に関しては、多少は軽快するかもしれないという結果ですね。
まとめ
今回は、スペインで行われた研究で、ワクチン接種後の解熱鎮痛薬(イブプロフェン)の使用が、乳幼児において発熱や局所反応などを軽減するか確かめています。
ワクチン接種直後に解熱薬を使用しても、発熱などの副反応を予防する効果はほとんどなさそうでした。
一方で、ワクチン接種直後の解熱薬使用が抗体獲得率に影響するか検討されていないのがこの研究の最大の懸念点です。
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