ITP(免疫性血小板減少症)の治療の選択肢の1つに、免疫グロブリン大量療法があります。
今回は、このエビデンスの礎となる症例集積について解説していこうと思います。
- 1981年スイスからの報告
- IVIGを投与したところ、血小板は急速に回復したことを認めた
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
小児の慢性または間欠性の特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) の7人(脾摘3名[うち2名は免疫抑制剤を中止すると再出血] 脾摘していない4名[1名はステロイド抵抗性; 2名はステロイド依存性; 1名は再発の数年前に1度寛解])と、これまでに治療歴のない急性ITPの小児6人を、免疫グロブリン (Ig) の大量静脈内投与により治療した。
免疫グロブリンは0.4g/ kg/日を5日間連続で投与する治療レジメであった。
結果
慢性 or 間欠性のITPの全ての患者で、血小板数は5日以内に急激に増加した。しかし、最初の反応およびその後の経過は患者により異なった。
慢性ITPの小児7名では、初期反応は非脾摘患者(20〜30万/μL)よりも脾摘患者(血小板数> 40万/μL)の方が良好であった。一方で、IVIGの単回投与で寛解したのは非脾摘患者1名のみで、残りの6名は1ヶ月前後で血小板数が低下するため、繰り返し免疫グロブリンの投与が必要であった。
急性ITP患者6名でも免疫グロブリン投与後に血小板数は急速に上昇したが、後に免疫グロブリン依存性となった2名は、そうでない4名の患者よりも、初期反応が小さい傾向(血小板数 < 20万/μL)にあった。
90~110日の観察期間中、慢性ITP患者6名中5名は免疫グロブリン投与のみで維持できた。
なお、免疫グロブリン大量療法の有害作用は観察されなかった。
結論:
免疫グロブリンは、ステロイドや免疫抑制剤を必要とする慢性・間欠的ITPの患者や、新規の急性ITPの患者においても有効かもしれない。
考察と感想
クラシックな論文ですが、この症例集積はITPにおいて免疫グロブリンが使用される契機になったものの1つでしょう。
そういう意味で、とても重要な論文と思います。
まとめ
スイスから報告された症例集積で、急性/間欠的/慢性ITPの患者にIVIGを使用した報告です。治療レジメは 0.4g/ kg/日を5日間連続で投与する治療レジメであった。
急性ITPに関しては、6名中4名がIVIGの単回投与への反応性が非常によく(> 30-40万/μL)、血小板数は正常範囲内を維持できる寛解状態に持ち込めたようです。一方で、複数回の投与が必要だった小児2名は、IVIGの初期反応が良くなかったようです(< 20万/μL)。
ステロイドや免疫抑制剤を必要とする間欠的 or 慢性ITPの患者7名において、初回IVIGの反応性は脾摘患者の3名の方が(> 40万/μL)、そうでない4名の患者(20〜30万/μL)よりも良好でした。一方で、IVIGの単回投与で寛解したのは、脾摘していない患者1名のみでした。
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