ITPの診断は基本は臨床診断ですが、抗血小板関連抗体の存在は、以前から言われています。
今回は、ITPにおいて、抗リン脂質抗体がどのような役割にあるのかを検討した研究になります。成人でのデータとなってしまいますが、ご容赦いただければと思います。
Diz-Küçükkaya R, Hacihanefioğlu A, Yenerel M, Turgut M, Keskin H, Nalçaci M, Inanç M. Antiphospholipid antibodies and antiphospholipid syndrome in patients presenting with immune thrombocytopenic purpura: a prospective cohort study. Blood. 2001 Sep 15;98(6):1760-4.
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
ITP患者における抗リン脂質抗体 (APAs) の病因的役割と臨床的重要性は不明である。
この研究では、 APAsの頻度および臨床的意義をITP患者で検討した。
方法
2人の新しく診断されたITP患者を前向きに検討した。対象となったのは、16〜70歳であった。
APS, SLE, その他の自己免疫疾患、AIDS, 悪性腫瘍などの既往がある患者は除外された。
検査
患者はループス抗凝固因子 (LA) および抗カルジオリピン抗体 IgG/IgM(ACAs) の存在について評価された。
治療
治療に関しては、血小板減少が中等度(50-100 x 10^9/L)または重度(0-50 x 10^9/L)の場合、経口メチルプレドニゾロン 1 mg/kg/doseを1ヶ月投与された。
ステロイド不応性の場合、脾臓摘出が行われた。
それでも血小板数が改善しない場合、アザチオプリン、ビンクリスチン、ダナゾール、IVIGが使用された。
結果
31人の患者 (37.8%) は診断時に抗リン脂質抗体(APA)陽性であった。
性別、初期血小板数、またはメチルプレドニゾロン療法に対する反応に関して、 APA陽性群とAPA陰性群は似通っていた。
5年間の追跡後、 APA陽性(n=31)とAPA陰性(n=51) ITP患者の累積無血栓生存率は、それぞれ39%と97.7%であり、APA陽性の方が血栓が生じるリスクが高かった(ログランク検定, P= 0.0004)。
さらに、 ループス抗凝固因子(LA)はITP患者における血栓症発症の重要なリスクマーカーであった。
追跡期間中央値38か月後、 APA陽性のITP患者14人 (45%) は、抗リン脂質症候群 (APS) の臨床的特徴(例:血栓症や胎児喪失)を発症した。
APSのあるAPA陽性患者とAPSのないAPA陽性患者の間で初期血小板数、治療への応答、またはACA陽性に関してはほとんど差はなかった。
LAに対する陽性率はAPSを発症したITP患者で高かった(相対リスク7.15 [95%信頼区間, 1.7~47])。
結論
結論として、この研究は、最初にITPとAPA陽性を示した患者において、高い割合でAPSを発症したことを示す。
ITP患者では、 APAの持続した存在(特にLA)はAPS発症の重要なリスク因子である。
考察と感想
抗カルジオリピン抗体 IgG/IgM(ACAs)に関しては、あまり詳しくはないのですが、カットオフはGPLまたはMPL unitにおいて、以下の通りだったようです:
- 陰性:0〜10 単位
- 弱陽性: 11〜19 単位
- 陽性: 20〜60 単位
- 強陽性:60〜単位
Abstractには、LA+ vs. LA -の比較のデータが載っていませんでしたが、5年間の血栓症の累積生存率は、96.3% vs. 33.1%でした。一方で、ACA+ vs. ACA-で比較をすると、65.6% vs. 63.4%と、ほとんど変わっていません。
ITPにおけるAPSを見ている研究ですが、論文中にはGpIIb/IIIaなどの記載も豊富にあるのですが、この研究では計測されていなかったのが少し物足りなく感じました。
まとめ
今回は、成人のITPにおいて、抗リン脂質抗体 (APA)の有無と、その後の経過をみています。
成人ITPのうち58%はAPA陽性で、(特にループス・アンチコアグラント陽性は)5年以内に血栓症を起こすリスクが高かったようです。
この現象が、小児ではどうなのか、個人的には気になっています。
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