ITPの診断は基本は臨床診断ですが、抗血小板関連抗体の存在は、以前から言われています。
今回は、ITPにおいて、抗リン脂質抗体がどのような役割にあるのかを検討した研究になります。成人でのデータとなってしまいますが、ご容赦いただければと思います。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
ITP患者における抗リン脂質抗体 (aPL) の臨床的意義を明らかにするため、本研究が行われた。
方法
- 抗カルジオリピン (aCL)抗体 (IgGとIgM)
- ループス抗凝固因子 (LA)
を、血小板が50×10^9́/L未満の成人のITP患者、215人の診断時に探索した。
ITPの診断時に、SLEやAPSの診断基準を満たす症例は除外した。
結果
aPL (aCLまたはLA)は55名の患者 (26%: N =293) で検出された。内訳は以下の通り:
- aCL単独は39名 (18%)
- aCLとLAは15名 (7%)
- LA単独は1名 (0.5%)
LAはIgG‐aCLの高レベルと相関していた。
年齢、性別、初期血小板数、出血スコア、急性または慢性ITP転帰のうち、若年齢のみがLA陽性と関連していた(平均年齢: 29 +/- 14歳(陽性) vs.45 +/- 20歳 (陰性))。
追跡期間の中央値31か月であったが、 14/215 (7%) の患者が血栓症(動脈=4、静脈および/または肺塞栓症 = 14)を発症した。そのうち4名 (29%) はaCLレベルは高くとLAを有していた。
Cox proportional hazard modelを用いた多変量解析では、血栓症イベントと関連を示した因子は以下の通りであった:
- 年齢:HR =1.6 [95%CI:1.2~2.4]
- LA : HR = 9.9 [95%CI: 2.3-43.4]
- 高いIgG‐aCL:HR = 7.5 [95%CI;1.8~31.5]
結論
血栓症率は低かったが、血栓症とLAまたは高いaCLレベルの間の関連は、 aPLがITP診断で検査されるべきであることを示唆する
考察と感想
ITP患者において、aPLA陽性は、その後の血栓にどう影響するかは、以下の通りのデータです:
aPLA | 陽性 | 陰性 |
血栓あり | 4 | 10 |
N | 55 | 238 |
リスク差にして3%、リスク比にして1.7倍の増加であることがわかります。
この解析だけでは、交絡因子の対処も不十分ですけどね。
まとめ
今回は、成人のITPにおいて、抗リン脂質抗体 (aPLA)の有無と、その後の経過をみています。
成人ITPのうち26%はaPLA陽性でした。
血栓症イベントと関連を示した因子は、LAと高レベルのIgG‐aCLでした。
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