ITP(免疫性血小板減少症)による出血の重症度の評価をどのように行うべきか、過去にも議論があったようです。
今回は、WHOの指標を中心に考察をしていこうと思います。
結論から言うと、この指標は簡便ではあるものの、ITPでの使用はあまり向かないと言う印象です。
- WHOの出血グレードに関して解説
- ITPにおいて使用することは、あまり推奨されていないよう
Miller AB, Hoogstraten B, Staquet M, et al. Reporting results of cancer treatment. Cancer. 1981;47(1):207-214.
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
WHOの出血の重症度の分類
出血グレードの大まかな分類は以下の通りです
グレード | 出血 |
0 | なし |
1 | 軽度 ・点状出血 ・紫斑 ・尿潜血 ・便潜血 など |
2 | 中等度で赤血球輸血を必要としない: ・鼻出血 ・肉眼的血尿 ・吐下血 など |
3 | 中等度の出血で、1日1単位(日本では2単位)以上の赤血球輸血が必要: ・巨大な血腫 ・持続する出血 など |
4 | 重度の出血 声明を脅かす出血 ・出血性ショック ・臓器出血 ・頭蓋内出血 ・心嚢内出血 ・肺出血 など |
少し詳しく見てみましょう:
Grade 1
Grade 1は最も軽症な出血ですが、以下の通り定義されてました:
- 皮膚粘膜出血:口腔内の血液水疱
- 点状出血:大きさが2 mm未満の病変
- 紫斑:直径 < 2.54 mm (1インチ)
- 斑状出血: < 10 cm未満の病変
- 中咽頭出血
- 結膜出血
- 鼻出血:持続時間が1時間未満で介入を必要としない鼻出血
- 性器出血:(月経以外で生じる)点状出血を伴う異常な膣出血 (1日2パット未満が目安)
Grade 2
Grade 2は中等度の出血ですが、以下の通り定義されてました:
- 斑状出血:10 cmを超える病変
- 血腫
- 鼻出血:1時間を超える or 介入を必要とする
- 網膜出血:視力障害を伴わない網膜出血
- 性器出血:(月経以外で生じる)1日2枚以上のパッドを必要とする異常な性器出血
- 下血、吐血、喀血、血尿、血便
- 浸潤部位からの出血、筋骨格系の出血
基本的には輸血を必要としないレベルでの出血を想定しているようです。
Grade 3
Grade 3は重度の出血ですが、基本的には輸血を必要とするような以下出血です:
- 吐血
- 喀血
- 血尿-凝血塊を伴わない間欠的な肉眼的出血を含む
- 不正性器出血
- 血便
- 鼻出血
- 中咽頭からの出血
- 浸潤部位からの出血、筋骨格系出血、または軟部組織出血
で、24時間以内に輸血を必要とする
Grade 4
Grade 4は最重症になります。命の危険性や、重篤な後遺症を残すリスクが高い状態とも言えます:
- 視野欠損を伴う網膜出血
- 神経学的徴候および症状を伴う非致死性の中枢神経系 (CNS) 出血
- あらゆる出血源からの致死的な出血
考察と感想
WHOの出血グレードは、過去のITPの研究でも用いられていたようではあるのですが、実はITPを背景にした場合、あまり評判がよくないようです。
例えば、こんな風に批判もされています:
WHOの出血グレードは、化学療法によって誘発された血小板減少症の出血をグレードするように設計されました。
しかし、 ITP患者の出血の表現型を正確に記述することに関しては、感度と精度に限界がある。
このグレードは過剰な主観的解釈を招きやすい。さらに、不均等な臨床的な間隔によって、重症度のカテゴリーが広範すぎたり、重複してしまうこともある。
この尺度では、単一部位での出血と全体的な影響とを比較することはできない。
まとめ
今回はWHOの出血の重症度分類について、小児ITPの背景で簡単に解説しました。
この指標はRCTなどでも使用されていたようですが、重症度の定義が曖昧で、主観的な要素が入りやすいという批判もあるようです。
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