ITPの診断は基本は臨床診断ですが、骨髄検査は診断の一助になります。
一方で、骨髄検査をすべきか否かは意見が分かれており、その点は昔から議論されています。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
骨髄検査の必要性は、ITPに矛盾しない臨床的および検査上の特徴を有する患者において、骨髄検査の必要性を評価された。
さらに、このテーマの関連した文献をレビューした。
方法
1988年1月~1998年1月の10年間において、骨髄検査を受けた全ての患者記録を後ろ向きにレビューした。データは病院と外来患者の医療と病理記録から集めた。
対象となったのは、孤立性の血小板減少症である。つまり、
- 白血球数正常
- ヘモグロビン正常
- 末梢血塗抹標本正常
- 凝固検査正常
で、血小板減少のみを認める患者86名を対象とした。
結果
86名の患者において、82名において骨髄検査はITPと矛盾しない結果であった(すなわち、巨核球および他の造血系は正常または増加している)。
残りの4人の患者は巨核球が低下していたが、全ての患者はステロイドに反応した。
全患者(86名)を骨髄穿刺後、中央値22か月間(範囲, 2-76ヶ月)追跡した。その間、 ITPに代わる診断を示唆する特徴を示した患者はいなかった。
さらに、急性白血病患者99名の初期臨床及び臨床検査所見もレビューした。
これらのデータから、ITPの診断のために骨髄検査を定期的に行う必要はないことが示唆された。
ただし、徹底的な病歴聴取と身体診察を実施し、全血球算定、末梢血塗抹標本、ルーチンの血液凝固検査で血小板減少症以外に異常が認められなければの話である。
成人で2件、小児で5件の過去のレトロスペクティブ研究の知見は、著者らの報告と一致しており、骨髄検査は必ずしも必要ではないことが示唆された。
結論
病歴および検査所見がITPに矛盾しなければ、診断のために骨髄検査を定期的に行う必要はないことが示唆された。
ITPにおける骨髄検査の価値は未解決のままであり、大規模前向き研究からのデータは有用であろう。
考察と感想
検査所見がITPに矛盾しないとありますが、具体的には
- 血小板数 < 14万/μL
- WBC > 4,500/μL + 分画は正常
- Hb > 11 g/dL (女) or Hb > 13 g/dL (男)
- 末梢血塗抹は正常 (赤血球の異常なし)
- 黄疸、肝脾腫、リンパ節腫大なし
- 血小板減少の原因となる薬剤投与歴なし(ヘパリン、キニジン、キニン、スルファ剤、サイアザイド系利尿薬)
- 凝固能は正常:PT, aPTT正常、fibrinogen正常
などが述べられていました。
今回の研究では、白血病患者においては、いずれかに該当する例ばかりだったようです。
まとめ
今回は、典型的なITPにおいて、骨髄検査をした症例を集め、仮にしなかった場合や、白血病との比較をしています。。
臨床経過や血液検査、診察において典型的であれば、必ずしも骨髄検査は必須ではない根拠となる論文の1つでしょう。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています