成人においては、慢性ITPにおけるピロリ菌の除菌効果は広く知られているかもしれません。
一方で、小児の報告は少なく、今回はハンガリーで行われた研究を見つけたため、紹介させていただこうと思います。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
Helicobacter pylori感染は成人におけるITPと関連しているが、この問題に関する少数の研究は小児分野において矛盾する結果を示した。
そこで著者らは、ITPの小児におけるHelicobacter pylori感染の発生率と除菌の血小板数回復に対する効果を前向きに検討した。
方法
年齢の中央値8.2歳(18ヶ月~18年の範囲)のITP(男子13名、女子14名)の小児27例を対象とした。
38人の健康な子供 (対照) も組み入れた(男児20例、女児18例、年齢中央値9.6歳、範囲4~18歳)。尿素呼気試験によりHelicobacter pylori感染と診断し、治療終了後6週間で除菌を評価した。
結果
ITPの27人の患者中2人の子供は、 Helicobacter pylori感染陽性 (7.7%) であることが判明し、併用療法で治療された。
対照は、免疫性血小板減少性紫斑病と比較して、 Helicobacter pylori感染率(3/38、7.9%)が同程度であることを示した。
追跡期間(平均10か月、範囲6~14か月)において、血小板数は除菌治療後の感染小児において何ら改善を示さず、非感染患者のそれらと同一であった。
ITPを有する2名のHelicobacter pylori感染患者で除菌の成功を確認した。
結論
これらは、ITPにおけるHelicobacter pylori感染の病原的役割を示唆しない。
ITPの小児患者におけるHelicobacter pylori感染のスクリーニングは推奨されない。
考察と感想
小児においてピロリ菌感染者の割合が、
- ITP: 7.7% (2/27)
- コントロール: 7.9% (3.38)
とほとんど変わらないようですね。
また、2名は除菌を成功したにも関わらず、血小板の回復を認めたかったようですね。
まとめ
今回は、小児において、慢性ITPでピロリ菌の感染率を調査した研究です。
慢性ITPの小児27名において、ピロリ菌感染者は2名いたようです。
2名のピロリ菌を除菌するも、血小板数の回復はなかったようです。
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