今回は、小児ITP(免疫性血小板減少症)の自然経過を報告した国際調査の結果です。少し古めの論文ですが、重要な報告と思います。
- 2003年の国際調査
- 頭蓋内出血を起こしたのは3名(0.17% [95%CI, 0.04〜0.50%])
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
小児の特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) における診断時年齢の影響を前向きに分析する。
方法
1997年6月〜2001年5月までに行われた国際登録を行い、ベースラインと6か月の追跡調査アンケートからデータの分析をした。
結果
2540名の患者データが登録され内訳は、
- 乳児:203人(7.6%)
- 1歳以上から<10歳: 1860人 (69.1%)
- 10〜16歳:477人(17.7%)
でした。
診断時の平均血小板数や、初期血小板数が<20×10^9́/L (20,000/ μL)となる割合は3つの年齢グループで同様であった。
男性/女性比は、幼児で最も高く、年齢と共に低下した 。
免疫グロブリン療法は乳児でより頻繁に用いられ、コルチコステロイドは10歳以上の患者によく使用されていた。
6か月での追跡情報は1742人の子供 (68.6%) で得られた。
慢性ITPは小児よりも乳児 (23.1%) のほうが頻度は低かった(vs.> 10歳)
ITP診断後の最初の6か月間で、1742人の子供のうち3人に頭蓋内出血が生じた。
結論
乳児期から青年期までの小児ITPは、臨床・人口統計学的および治療因子において不均一性な分布を示す。
考察と感想
小児ITPにおける頭蓋内出血(ICH)の頻度が推定されていますね。1742人中3名なので、0.17% (95%CI, 0.04%〜0.5%)となります。
この3名のうちわけは、1.4歳、8.5歳、14.9歳ですね。ICHを起こした小児をまとめると、以下の通りです:
まとめ
37カ国・220名の医師を対象にした国際調査では、2540人の小児ITP患者のデータをもとに頭蓋内出血のリスクを報告しています。
この調査で6ヶ月間追跡が可能であった1742名の小児ITPのうち、頭蓋内出血を起こしたのは3名(0.17% [95%CI, 0.04〜0.50%])でした。
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