小児科

実生活における皮下および舌下アレルゲン免疫療法利用者の服薬遵守と継続[オランダ編]

皮下アレルゲン免疫療法(SCIT)と舌下アレルゲン免疫療法(SLIT)は、アレルギー性鼻炎の治療法として安全かつ効果的ですが、望ましい臨床効果を得るためには、高い服薬遵守と継続が不可欠ですが、実際のところはどうでしょうか?

 
参考文献

Kiel MA, Röder E, Gerth van Wijk R, Al MJ, Hop WC, Rutten-van Mölken MP. Real-life compliance and persistence among users of subcutaneous and sublingual allergen immunotherapy. J Allergy Clin Immunol. 2013 Aug;132(2):353-60.e2. doi: 10.1016/j.jaci.2013.03.013. Epub 2013 May 4. PMID: 23651609. 

実生活における皮下および舌下アレルゲン免疫療法利用者の服薬遵守と継続[オランダ編]

研究の背景/目的

皮下アレルゲン免疫療法(SCIT)と舌下アレルゲン免疫療法(SLIT)は、アレルギー性鼻炎の治療法として安全かつ効果的ですが、望ましい臨床効果を得るためには、高い服薬遵守と継続が不可欠です。 

実際の生活において、イネ花粉、樹木花粉、およびハウスダストマイト免疫療法利用者の服薬遵守と継続のレベルおよび予測因子を評価し、早期中断によるコストを推定することを目的としています。 

研究の方法

1994年から2009年の間に関心のあるアレルゲンの免疫療法を開始した6486人の患者からのデータを含む、オランダのコミュニティ薬局データベースを用いた後ろ向き解析を行いました。

2796人の患者がSCITを受け、3690人がSLITを受けました。治療中止までの時間を分析し、適切な場合は時間依存の共変量を含むCox比例ハザードモデルを使用しました。 

研究の結果

全体として、最低限必要な治療期間である3年に達した利用者は18%に過ぎませんでした(SCIT、23%;SLIT、7%)。SCITおよびSLIT利用者の中央値はそれぞれ1.7年と0.6年でした(P<.001)。早期中止の他の独立した予測因子は、処方者(一般開業医の患者がアレルギー専門医および他の医療専門家の患者よりも継続期間が長い)、単一アレルゲン免疫療法、低社会経済状況、若年も予測因子でした。 

継続的な患者のうち、56%は薬局で薬を受け取る際に遅れることがありませんでした。 

治療の第3年に中止した非継続患者1人あたりの直接的な薬剤費用は3,800ユーロであり、これはほとんど無駄になっていました。 

結論

実生活における継続は、SCIT利用者の方がSLIT利用者よりも良好であるが、全体としては低い。潜在的な障壁の特定や服薬遵守と継続を向上させる措置がさらに求められる緊急の課題である。 

考察と感想

この研究は、実際の生活におけるアレルギー性鼻炎の免疫療法利用者、特に草花粉、樹木花粉、およびハウスダストマイト免疫療法利用者の服薬遵守と継続のレベルを評価し、早期中断によるコストを推定することを目的としています。研究結果から、SCIT利用者の方がSLIT利用者よりも実際の生活における継続が良好であることが示されました。しかし、全体として継続率は低く、治療の効果を最大限に引き出すためには改善が必要です。 

低い継続率は、治療の効果が十分に得られない原因となり、また、経済的なコストが無駄になるリスクが高まります。研究では、患者の年齢、社会経済状況、処方者の違いなどが、継続率に影響を与える要因として挙げられています。これらの要因に対処することで、患者の服薬遵守と継続が向上し、治療効果が最大化される可能性があります。 

今後の研究や実践において、患者の個別のニーズやバリアに焦点を当て、遵守と継続を向上させる戦略を開発・実施することが重要です。また、医療専門家間での情報共有や連携を強化し、患者に適切な指導やサポートを提供することで、服薬遵守と継続の改善が期待できます。さらに、治療法自体の改良や、患者が治療を継続しやすい環境を整えることも、継続率向上に寄与するでしょう。 

 

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。