- 川崎病にIVIGをアスピリン
すでに医学生でも知っているようなことですが、この根拠がどこから来たのか知っている方、エビデンスの詳細を知っている方は意外と少ないのかもしれません。
今回の研究は、この方針に科学的な根拠となる論文の1つです。
- 1984年に報告された日本からのRCT
- IVIG + アスピリン vs. アスピリン単独を比較
- 30日以内の冠動脈病変は、リスク比にして1/3に
現代とは治療のレジメがやや異なりますが、クラシックな論文をしっておくことも重要と思います。
研究の概要
目的と方法
(1984年に論文が報告された当初は)川崎病の従来の治療法であるアスピリン単独でした。
川崎病の冠動脈病変を予防するための高用量ガンマグロブリン静脈内投与 (IVIG) の能力を評価するため、アスピリン vs. IVIG+アスピリンを、多施設ランダム化比較試験で評価した。
患者はアスピリン(N = 45)またはIVIG+アスピリン (N = 40)に無作為に割り当てられ、冠動脈拡張のリスクを比較した。
免疫グロブリン製剤は、400 mg/kg/日を5日間かけて投与された(*現在の標準治療とは異なります)
結果
年齢、性、治療開始までの期間または重症度は、2グループで差はほとんどなかった。冠動脈拡張の発生は、二次元心エコーによりモニターした。
発症29日以内の冠動脈病変のリスクは以下の通りであった:
アスピリン | アスピリン +IVIG | |
CAL | 14/33 (42%) |
6/40 (15%) |
リスク比とリスク差を計算すると、以下の通りです
- リスク差:-27.4% [-6.3%〜-47.6%]
- リスク比:0.35 [0.15〜0.82]
30~60日の期間に新しい病変が出現することはなく、この期間での冠状動脈拡張は、アスピリン単独グループは14例、アスピリン+IVIGグループは3症例で持続した。
心エコー検査で異常が認められた患者では、川崎病発症後30~60日に選択的冠動脈造影を行い、病変はアスピリン+IVIG群の6例中1例、アスピリン単独グループは19例中11例に確認された。
結論
高用量IVGGは川崎病患者における冠動脈異常の頻度を低下させると思われる。
感想と考察
川崎病にIVIGはもはやスタンダードで、誰もが知っていることですが、1980年代から徐々にエビデンスが集積してきたようですね。
まとめ
川崎病に免疫グロブリン大量投与が有効であることが示唆された日本からのランダム化比較試験でした。
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